23人が本棚に入れています
本棚に追加
/165ページ
そしてその頃、彼は1人さっき別れたばかりの彼女を思いながら静かに教室へと向かう廊下を歩いていた。
そして歩きながら彼は別れ際の彼女を思い出していた。
『それじゃあ授業が終わったらいつものカフェで待ってるから』香織
香織は颯太に機嫌よく微笑みながらそう言って行った。
颯太はそう言って浮かべた香織の笑顔を思い出しながら複雑に胸が締めつけられるように痛んだ。
「本当に別れるしかないのか…俺たちはこれ以上、一緒にはいられないのか?」颯太
1人そう呟くと彼は片手を固く握った。
本心ではわずかに彼の気持ちが揺れていたーー
颯太にとって香織は初めて恋を知った人で、初めて出来た特別な人だった…
ずっと一緒にいると彼は今まで信じて疑わなかった。
そして別れを秘かに決断してからは彼の中で香織を手放したくないという想いが1日を過ぎるたびに少しづつ大きくなっていっていた。
別れを決断するのは簡単だったーー。
この決断が香織のためなのだと思えば、それは颯太にとっては最善の選択だった…
だけどそれからは1日を終えるのが彼の中で怖くなっていった。
別れが一歩一歩と目の前に近づいて来ている様な気がした。
そしてそれは皮肉にも香織の笑顔を見るたびに颯太は別れが近づいていることを感じていた。
最初のコメントを投稿しよう!