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家に入るとお母さん!と羽衣と咲兎が駆け寄ってきてウィードに抱き着きよかったと安心したように笑う。
それに続いてセンチェルスとリーヴァがおかえりなさいと出迎えてくれる。
他愛もない、ただそれだけなのになんて幸せなんだろうとウィードはその場に泣き崩れてしまい抱き着いてきた羽衣と咲兎をぎゅっと抱きしめごめんねごめんねと叫んだ。
「ごめんねぇ! ごめんね……っ! しんぱい、たくさん、かけてっ! ごめんねっ……!」
「お母さん、泣かないでです……。じゃないとボクたちだって……っ、ない、ちゃいま、す……っ」
「お母さん、泣かないで……っ」
「泣き虫さんがこんなに、これは大変です」
わんわん三人で玄関で泣きじゃくる姿を見て困ったように肩を竦めぽんぽんと頭を撫でリビングに行きましょうと声をかける。
しばらく泣いてやっと泣き止んだ三人をセンチェルスとリーヴァ、そしてシュヴァルツ、ヴァイスがリビングへ運びソファーに座らせる。
陽はとっくに暮れており夜になってしまい夕飯は出前でとピザを2枚頼んでみんなで囲んでソレを食べながらごめんね……とウィードは謝る。
「ごはん作る時間、なくなっちゃった……」
「いいんですよ。たまにはこういうのも悪くないですから」
「俺、心配かけちゃった分、美味しいお料理作ろうと思ってたの……」
「それは明日の楽しみにしましょう、ね?」
「うん……」
「ウィード様、アレ、渡さないの?」
「アレ? 何か買ってきたの? ウィードくん」
「あ、えっと……」
早く早くとシュヴァルツに急かされウィードは赤い包み2つと白い包み2つを取り出し赤い包みをセンチェルスと羽衣に、白い包みを咲兎に渡し、残った白い包みを自分の手元に残す。
これは?と首を傾げるセンチェルスに開けてみてと告げる。
その声に従いセンチェルスと咲兎と羽衣は包みを開き中のネックレスを取り出す。
センチェルスと羽衣には水色の、咲兎とウィード自身には紫色の、それぞれ石がついたハート型のネックレス。
それぞれの手元にわたるとウィードはおそろい…と少し恥ずかしそうに俯き小さく呟く。
「買い物帰りにウィード様が見つけて四人でつけられたらって買ってたの」
「……俺、沢山心配かけちゃったから……。そのお詫びと……ずっといっしょにいたいねって……お願い……」
「ウィード……。とても嬉しいですよ。貴方から初めてもらうおそろいのモノですね」
「う、うんっ」
「わーい! お母さんともお父さんと羽衣ともおそろいですー!」
「嬉しい……」
「ウィード、つけてもらえますか?」
センチェルスにそう言われウィードは力強く頷き彼に駆け寄ると彼の首に買ってきたネックレスを着ける。
似合いますか?と聞かれ自分の色である水色が目の前で光っているのをみて大きく頷きいつもの笑顔を見せた。
「やっと笑ってくれましたね、ウィード。さ、貴方にもつけてあげますから、後ろを向きなさい」
「うんっ!」
「羽衣も! 後ろ向くですよ! ボクがつけるです!」
「うん。ういも咲兎のつける」
お互いにそのネックレスをつけあうとおそろいだねと四人で笑いあい、その様子を見てリーヴァと二人もよかったと安堵した。
食事も終わり子どもたちも寝静まったころ、ウィードはセンチェルスと二人きりで薄暗い自室のベッドに座り、寄り添いあうように座っていた。
月明りだけが照らす部屋でウィードは指輪とネックレスを見て幸せそうに笑ってセンチェルスにもたれ掛かっており、センチェルスはそんなウィードの髪を弄んでいた。
「センチェルス、俺ね、すごい幸せ」
「ええ、私も幸せです」
「でもね……きっとどこかで俺がこんなに幸せな中、不幸になっている人もね、いると思うの……」
「ウィード……」
「だから俺、そんな人たちの分も幸せになろうって思ったの。だめ、かな……?」
「いいんじゃないですか。貴方が幸せだと私も羽衣も咲兎も幸せですから」
「よかった……。俺、幸せになってもいいんだよね」
「ええ。いいんです。たくさん幸せになりましょう。ウィザリア」
「うん、聖夜」
ちゅっと触れるだけのキスをし、ベッドに寝転がる。
お互いの顔を見合いながらもっと幸せになろうねと言いあうとウィードはセンチェルスの腕の中で静かに眠りについた。
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