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プロローグ
空に浮かぶのは真っ赤な月。
血のように、赤くて、黒くて、神秘的な夜。
白亜の城だったその場所はいまや見る影もなく、ただこの世界の支配者が住まう場所になっていた。
城のベランダには四人の影。
一人は黒いドレスを纏う水色の長い髪の少年。
一人は紫の癖の強い髪の貴族服を身に纏う青年。
その二人に傅くように足元に跪くのは白衣の青年とキャスケットをかぶった至って普通の少年で。
四人が佇むベランダの真下、そこには大勢の人間の姿があった。
その表情は一様に全ての希望や幸福といった感情を奪われたかのように空ろな瞳をしていて。
「時は全て預かった。汝らに返すことは一切叶わない」
「生きていたかったら俺たちに従え。さもなくば、即座に貴様らの時を破壊し、その存在ごと消し去ってくれよう」
「我らが女王ウィード・ノルフェーズの名の下に」
「我らが宰相センチェルス・ノルフェーズの名の下に」
「「これより二人の主の名の下にこの世界は再構築される」」
跪いていた二人が立ち上がり、足元に群がる人間の波に向かいそう宣言する。
ざわつく人々の様子を見ながら満更でもないように女王と呼ばれたドレスの少年は宰相と呼ばれた青年に寄り添い、幸せそうに微笑む。
どうしてこうなってしまったのか。
二人が望んだ結末はこんな結末ではなかったはずなのに。
これは人ならざる二人が人間にその存在を否定され失い続けた果ての物語……──。
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