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「メタラエル様!! コーキセリアの軍勢が街の中枢まで進行しております!」
「現在第二、第三部隊が交戦中! 敵の数はこちらの軍勢を遥かに上回っております!」
「大丈夫。ここは堕ちない。あの二人の祈りがある限り、この城は堕ちません。最悪下級天使は見捨てなさい。属性確定のされている中級以上の天使を優先に守るよう伝令を」
「はっ!」
天界城の大広間。
その玉座に座る天使長メタラエルは伝令役から状況を聞くとそう指示を出し、伝令役はそれを各部隊に伝えに行く。
「何人連れて来ようとあの二人の魔力がある限り、この城は絶対に堕ちない。堕ちるわけがないのですよ」
「メタラエル様」
「どうしたのかしら、ファウラ。貴方は第四部隊で城の出入り口の悪魔達と交戦中のはずではないの?」
「あの悪魔の中に同胞がいます。どうしますか?」
「同胞が? 悪魔の味方をしているというのかしら?」
「はい」
一人静かに座っている天使長の前に転移してきたファウラは自分が見たことを報告し、跪く。
そうね……と考える素振りを見せると同じ天使なら助けてあげなさいと微笑みかける。
「きっと誑かされているのでしょう。可哀想に……。貴方なら助けてあげられるでしょう? 星天使ファウラ?」
「はい。星の導きのもと、あの天使を助け出して参ります。天使長メタラエル様」
立ち上がりそう告げるとファウラはその場所から姿を消す。
城の門の前に戻った彼は襲いかかってくる悪魔たちを避け、ロードに力を注ぐウェルナーの元に歩み寄って行く。
ロードはそれに気づいたかのように配下の悪魔数人に天使たちを押し付けるとウェルナーの元に退きファウラにその剣先を突きつける。
「邪魔だよ。僕はそっちの天使に用事があるんだ」
「きみこそ何勝手に僕のウェルナーに手を出そうとしてんの」
「その子は天使だからこっちに来るべきなんだ。君たち悪魔といたら穢れてしまう」
「はぁ? 何言ってんの? ウェルナーは穢れてなんかいないけど?」
「穢れていくの。少しずつ、君たちに穢される。天使は天使といなきゃ。さ、一緒にいこ?」
「ちょっと、僕を無視して話さないでくれる? それこそ僕の愛しているウェルナーが穢れるんだけど」
「天使である僕が穢す訳ないでしょ? 頭悪いの?」
「なんかこいつ腹立つ。ウェルナー、こいつ殺すから力をちょうだい」
「ふふ……。ロードにちょっと似てるね、この人。性格とか、話し方とか」
「はぁ? こんな奴と一緒にしないでくれる? 」
ファウラと対峙しそう言い合う二人の会話を聞きながらくすくす笑うウェルナーに呆れたようにそう話すロード。
彼もそれを思っているようで本当だよと肩を竦めると剣をロードに向ける。
「ウェルナー」
「はいはい。わかったよ」
「ねぇ、君の名前を教えて?」
「え? 俺? 俺はウェルナー。ウェルナー・ウォーリア。あなたは?」
「ウォーリア……? あ、もしかしてあの元未完成天使のウィードの……」
「父さんを知ってるの?」
「そうか……。なら、余計君を救わなきゃ。君のお父さんを救えなかったから、今度こそ……僕が……星を司る天使である僕が君を助ける!!」
「ウェルナー!」
「はーい。……闇王に風の加護を……」
ウェルナーはロードに言われるまま両手を組み祈るようにそう呟くと白いローブに姿を変える。
彼から注がれる魔力を自分の魔力に転換させロードは襲いかかってくるファウラに応戦する。
キーンキーンと金属音がする中、ウェルナーは自身に襲いかかってくる天使にごめんね、と謝りながらも弱い風魔法で退けていく。
「なんで……っ、なんでこいつも僕の邪魔するの……っ! 僕はただ、同胞を、救いたいだけなのに……!!」
「それは君のエゴってものだよ。ウェルナーは君に救いを求めていない」
「うるさいうるさい!! 悪魔が星天使である僕に指図するな!!」
「あーもう、めんどくさいな、きみ。天使ってすぐ自分の思い通りにならないと癇癪起こすよね。そんなヒトたちの下僕をしてたなんてやってらんないよ」
「ロードも結構めんどくさいけどね」
「ウェルナー、僕のどこがめんどくさいっていうのさ?」
「だって、俺がどっか行こうとするとどこ行くの? 何するの? 誰に会うの? って」
「当たり前でしょ」
「余裕ぶってんなよ!! この野郎!!」
「あーあー、天使がそんな暴言吐くなんてなってないな。そんな天使の元じゃ、僕ら翼者は従えないよ。まぁもういないけど」
ファウラが振るうその剣を流しながらロードはやれやれと大げさにため息をつく。
けれど彼は自分のその使命にかられただただ無闇にその剣を振るっていて、ウェルナーはその光景を可哀そうだな……と見ていた。
「僕は……っ、僕は今度こそ君をっ! 助けるんだ……! 君が穢れないように!!」
「俺は穢れてなんかいないよ」
「ウェルナー……! 下がれ!!」
「ロード、この子は俺が止める」
そう言ってウェルナーは姫化したままロードの前に出るとファウラに向きもうやめよ?と告げる。
さすがに同じ天使に剣を向けられないファウラはその剣を鞘に納め呼吸を整えると僕と行こう?と手を差し伸べる。
けれど彼はその手を取ることはなく首を横に振り俺はこっちにいると静かに告げた。
「なんで……」
「俺はこの人に大事にされてるの。だから」
「でもそいつは悪魔なんだよ……? 僕たち清廉な天使と違ってそいつは……」
「君だって死神と一緒にいたじゃん。何が違うっていうのさ?」
「死神……? 僕が? 馬鹿な事言わないで。天使である僕がそんな死そのものの存在と一緒にいたわけないでしょ?」
「……君、もしかして、ミウラとロゴスのこと消されたの?」
「ミウラ……? ロゴス……? 知らないけど、そんなヒトたち」
「……なるほど。そういう事ね。だから君はそんなことを言うんだ。ウェルナー、あのいけ好かない王様呼んできて。僕はこいつ捕まえておくから」
そう言うや否やロードはファウラの差し伸べられた手を掴み地面に投げるとそのまま馬乗りになり逃げられないように両翼を広げた状態で短剣を突き刺し固定する。
ウェルナーは痛そう……とソレを見守りながらわかったとセンチェルスを探しに街の方へと飛んでいく。
街は既に崩壊寸前で倒壊した建物の下敷きになっている天使が何人もいた。
父さんが見たら悲しむだろうな…と思いながら彼は街の中央の噴水に降り立つ。
「センチェルスさん……どこだろ……」
[あれぇ? きみ、えっと……]
「あ、アカツキくん。こんにちわー。センチェルスさん知らない? ロードに頼まれて探しに来たんだけど……」
[あの人ならお城に向かってると思うよ? ボクとディーラスとアーメイはここの天使の相手をしててって言われたんだ!]
「じゃあもうお城にいるかな……」
噴水近くに現れた銀狐姿のアカツキにそう話しながら瓦礫に押しつぶされた天使たちを救出するウェルナー。
何してるの?と歩み寄るとこのままじゃかわいそうだからと助けられそうな天使を一人で救出を続けるウェルナーにアカツキはボクも手伝う!と一緒に瓦礫を片付け始める。
そこへなにしてるの?と驚いた様子で現れたのは銀狼姿のディーラスの背に乗ったアーメイで。
アカツキはたすけてるのー!と明るく答え片付けを続けた。
「てかウェルナー、キミ、なんでここにいるの? ロードは?」
「あ、そうだった。センチェルスさん探しに来たんだった」
「聖夜くんならとっくに魔王さんたちと城にウィードさん助けに行ったけど?」
[用があるなら早くいかないと捕まんねぇぞ]
「あ、うん。じゃあアカツキくん、あとはよろしくね」
[はーい! あ! ディーラスたちも手伝ってよー! ボク一人じゃ無理―!]
「はぁ?」
[お前戦場に来てる自覚あるか?]
別にいいじゃんーと笑う声を聴きながらウェルナーは天界城に戻っていく。
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