EP10:第二次天魔大戦

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コツコツと二人の足音だけが響く。 長い長い螺旋階段をゆっくり降りていく。 「ファウラ」 「え、なに?」 「貴方はミカエラのところに戻りなさい。嫌な予感がします」 「わかった。何かあったらすぐ呼びに来る」 「はい」 ファウラをミカエラの元へ戻らせるとセンチェルスは一人地下室へと足を進めた。 どれだけ降りてきただろう。 それでも螺旋階段は下へ下へと続いており、その先が見えない様子だった。 早く早くと焦る気持ちを隠すこともなく急ぎ足で下へ駆け下りていく。 けれどその先は全く見えてくることはなくて。 「くそ……っ、はやく、はやくあの子を……っ、あの子に、っ」 見つけたい、会いたい、触れたい。 そう思いながら長く続く階段を下っていく。 しばらく下っていくと薄桃色と白い光の粒子が階段の先から一粒ふわふわと浮いてくるとセンチェルスの周りをくるくる回り出す。 これは……と見ていると2つの光はまるで彼を導くように階段の先に消えていく。 センチェルスは慌ててその後を追っていくとやっと終着点に辿り着いたようで2つの光は重い鉄扉の前で弾けて消えた。 「ここにあの子がいるんですね……」 音も光も漏れてこないところを見ると相当重い扉なんだと感じ、どうしたものかと考え込む。 扉には鍵穴が一つあるだけで特に取っ手のようなモノはなかった。 困ったなと立ち往生していると中からそこに誰かいるのかと叫び声が聞こえ外にはいるが中に入れないと答える。 「中に……。鍵は!? 鍵は持ってないのか!?」 「持ってるわけないでしょう?」 「くそ……っ、早くしないとこいつが……っ」 「そこにウィードがいるんですね? ウィードに何かあったんですか!?」 「ウィード? そうかそれがこいつの……ってことはお前、まさか……、こいつが言ってたコーキセリアの王か!?」 「ええ。そうです。もしかして貴方、ウィードが言っていたラグシルという天使ですか?」 「あ、ああ。ボクがラグシルだ」 「それで、ウィードに何があったんですか!? あの子の声を聴かせてください!」 「桜花はボクに魔力を分けて……動かなくて……っ、頼む、こいつを助けてくれ……!」 扉ごしに聞こえるラグシルの声を聴いてセンチェルスは舌打ちすると鍵はどこなんですかと叫ぶ。 ラグシルは少し黙った後、鍵は自分と天使長であるメタラエルしか持っていないと答えた。 それを聞いた彼はやはり天使長をしとめるしかないかとその場を後にしようとするとそれをラグシルが待てと呼び止めてくる。 「……こいつを、助けにきたんだよな、貴様は」 「ええ。もちろん」 「こいつを……助けられるんだよな……?」 「もちろん」 「……わかった。あとは貴様に託す。だから」 助けてくれと小さな声が聞こえ中で何かが倒れる音が聞こえると同時にラグシルが持っていた鉄扉の鍵がセンチェルスの手元に転送されてくる。 鍵を手にしたセンチェルスは急いでその鍵で扉を開くと中に駆け込む。 暗い地下室の中央にある大きな魔法陣の中、その中で折り重なるように2つの影が倒れていた。 その一つはウィードで、彼を庇うように覆いかぶさっていたのは体が透き通り始めたラグシルだった。 彼はそこに駆け寄ると二人を魔法陣から引きずり出し、先にウィードに魔力の補給をするためにキスをする。 その間にもラグシルの体は魔力を失った影響なのか少しずつその体が消えていく。 「……ん、ぅ……」 「ウィード……、よかった……」 「センチェルス……、おれ……、助かった、の……?」 「ええ。あとは、この子ですね」 「……! ラグシル……!!」 目を覚ましたウィードはセンチェルスの腕の中から抜け出し消えかかっているラグシルに駆け寄り、自分の魔力を同調させようとするもうまくいかず、この子も助けてと彼に懇願する。 「お願いセンチェルス!! ラグシルも助けて!! 早くしないと消えちゃう……っ、ねぇ……!!」 「仕方ないですね。そんな泣きそうな顔されたら助けないわけにはいかないじゃないですか」 貸しなさい、と微笑みかけるとウィードは花が咲いたように笑いお願いねとラグシルを彼に渡し、こっち向いてるから!と二人に背を向け座り込んだ。 センチェルスはウィードに耳を塞ぎなさいと指示をし、彼がそれに従うのを見るとラグシルに自分の額を当て自身の魔力を彼に注いでいく。 すると少しずつその体が元に戻っていき、やっと目を覚ました彼はなぜ…と驚いたようにセンチェルスを見上げていた。 「なぜ、ボクを……」 「あの子に頼まれたからですよ、ラグシル」 「桜花に……?」 「ほらさっさとここから出ますよ。走れますか?」 「……いや、ボクは無理だ。いいからボクを置いていけ。貴様は桜花を助けに来たんだろう?」 「貴方も助けてほしいとの要望なんですよ。ここで貴方を置いていったらウィードに嫌われるじゃないですか。まったく嫌われる私の身にもなってくくださいよ。仕方ない、ウィード、貴方は走れますか?」 「え? うん! センチェルスはラグシルのことお願いね!」 魔力を取り戻し始めたラグシルを姫抱きにするとウィードを連れ地下室を飛び出し螺旋階段を飛び上がっていく。 地下室に向かうときとは違いすぐに階段の入り口へとたどり着いた。 そこにはボロボロになって倒れて動かないファウラとそんな彼を守る様にメタラエルと対峙しているミカエラで。 彼女はボロボロになりながらも必死に槍を構えていた。
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