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EP11:望んでいた幸せ
数日後。
「ウィード、ココがこれから私たちが幸せになるために住むお家ですよ」
「わぁ……!!」
目を覚ましたウィードを連れセンチェルスは例の家に来ていた。
まさに夢見ていた家に目を丸くするウィードにまだあるんですよ?と彼はどこかに電話をかける。
するとはーいと家の中からリーヴァの声が聞こえ出てくると彼は二人の子供を連れていた。
ウィードは二人を見てこの子たちは?と首を傾げ、そんな彼にセンチェルスは私たちの子供ですよと子供たちを手招いた。
「俺たちの……子供……?」
「そう。私たちの遺伝子を受け継いだ正真正銘の私たちの子です。こっちのピンクがかった紫の髪の子が羽衣、こっちの水色の髪の子が咲兎です」
「羽衣……? 咲兎……?」
「羽衣、咲兎、こっちはウィード、貴方達のお母さんです。私はセンチェルス、貴方達のお父さんです」
「……お母さん……?」
「お父さん……?」
そうですと頷くと羽衣と咲兎は互いに顔を見合わせてからまたウィードとセンチェルスを見ると花が咲いたように笑いお母さん!お父さん!と羽衣はウィードに、咲兎はセンチェルスにそれぞれ抱きついた。
二人の小さな体を抱きとめたウィードとセンチェルスは驚きながらもしっかりと抱き上げ子供たちの顔を見る。
二人ともセンチェルスとウィードの色彩受け継いでおり羽衣は右が水色で左が紫、咲兎はその逆で右が紫で左が水色の瞳をしており、目つきや顔立ちから羽衣はウィード似、咲兎はセンチェルス似なのがうかがえた。
咲兎はなぜか眼鏡をかけており、目が悪いの?と問いかけるとおしゃれでつけているみたいですよとセンチェルスが面白そうに答えた。
「センチェルス様、お家の中へ入ってはどうですか? 中もウィードくんに見せたいでしょう?」
「あ、そうでした。行きましょう、ウィード」
「う、うん……」
センチェルスは咲兎を抱いたまま家へ入っていき、ウィードも慌てて羽衣を抱いたままその後を追った。
家の中は真っ白い壁に覆われており、玄関の奥にある螺旋階段が上の方に伸びていた。
玄関から少し歩き右を向くと広いリビングとダイニング、キッチンがあり、リビングの中央にはおしゃれなテーブルとイスが佇んでおり、窓際には白い大きなソファーとガラスのローテーブル、壁にはめ込まれた大きな液晶テレビがあり、窓には白いレースのカーテンがかかっていた。
「すごい……きれい……新築みたい……」
「二階のお部屋もぜひ見て、ウィードくん」
「二階……?」
「私たちの寝室と子供たちの部屋があるんですよ」
行きましょうとリビングを出ると子どもたちが自分たちの腕から降り、階段を駆け上がっていく。
待って待ってとその小さな背中を追いかけると子どもたちはこっちこっちと自分たちの部屋へウィードを引っ張っていく。
窓際にダブルサイズの天蓋付きのベッドが、その近くに二人分の勉強机があり、反対側の壁には備え付きのクローゼットがあった。
その扉を邪魔しないように置かれたカラーボックスには二人の玩具やぬいぐるみがしまわれており、クローゼットを開けると二人分の洋服がしまわれていた。
「ういたちのへや」
「ふっふーん! いいでしょう! ボクたちのお部屋なのです! でもお母さんとお父さんの部屋のがもっとすごいですよ!」
「そうなの? 咲兎?」
「はい! まるでお姫様みたいなお部屋なのですっ! ね! 羽衣!」
「うん」
「早く行くですよ!」
「はやくはやく」
「ま、まって…!」
子ども部屋から子どもたちに引っ張られながら出てきたウィードに振り回されてますねと苦笑しながらセンチェルスもその後を追い、自分たちの部屋へと入っていく。
その部屋の中央にはでかでかと白い天蓋付きベッドが置かれており、窓には白いレースカーテンがかけてあった。
壁際には白い三面鏡のドレッサー、大きなクローゼットには色とりどり様々な種類のドレスやロリータ服があり、その隣のクローゼットには普段でも着れそうな白いワンピースなどのシンプルな服がしまわれていた。
「このクローゼット2台、全て貴方の服です。好きなモノを着なさい」
「これ全部俺の……?」
「そうです。私のはこっちのクローゼットに入ってます。あまりにも増えそうならお部屋を増やしてそこを洋服置き場にしましょう」
「このドレッサー……お姫様のみたい……」
「アクセサリーもたくさんありますから、好きなのを使うといいですよ」
「本当に……ここが俺たちの幸せのお家になるんだ……。嬉しい……」
「センチェルス様、例のモノ、渡さなくてよろしいんですか?」
「あ、そうでした。ウィード、左手を」
なに……?と言われるまま左手をセンチェルスに差し出すと、彼は足元に跪き、ジャケットのポケットから白い小さな箱を取り出すとソレを開けてウィードにみせる。
中にあったのは綺麗なアメシストが埋め込まれたシルバーリングで…。
驚くウィードにセンチェルスはその箱からリングを取ると、彼の左手を取るとその薬指にはめるとまっすぐ見つめた。
「これって……」
「ウィード。私と結婚しましょう。ね。貴方の全てを私に下さい」
「センチェルス……っ。お、俺……、センチェルスのお嫁さんに、なれる、の……っ? ほんとに……?」
「はい。私の可愛い可愛いお嫁さんになってください。もうその時でしょう? 貴方は十分私に釣り合うお嫁さんです」
「っく……せ、んちぇ……るすっ……! おれ、おれっ、……! うわぁああああ!!」
「おやおや……」
あまりの嬉しさに号泣し抱き着くウィードを抱きとめセンチェルスは困ったように笑いながらその頭を撫で泣き止んでくださいと慰めていた。
そんな様子を見ていたリーヴァと羽衣と咲兎はおめでとうと拍手で二人を祝福していた。
「お目目が真っ赤になっちゃいますよ? それはそれでウサギさんみたいで可愛いですが」
「せんちぇるすっ、せんちぇるすーーー! おれ、おれ!! うれしいの! やっと、やっとセンチェルスの、お嫁さんに、なれるの!! 嬉しいのっ!」
「はい。私もこんなに愛らしい子をお嫁さんにもらえて嬉しいですよ」
涙でぐしゃぐしゃになった顔を見ながらセンチェルスはそう話し、もう片方のリングを彼に渡す私にもはめてくださいと告げる。
ウィードは分かった!と力強く頷きリングを受け取るとセンチェルスの左薬指にソレをはめた。
二人でそれをながめながらこれで夫婦ですねと微笑みあう。
「結婚式、どうしましょうか? 婚姻届は既に提出済みなので後は式を挙げるだけなのですが」
「海辺の式場を既に予約済みです。招待状も投函済、日程は来週になります」
「リーヴァさん、さすがですっ!」
「ういたちがお母さんのベール持つんだよね、咲兎」
「そーです! ボクたちが持つですよ! 羽衣!」
「だそうですから、ドレスの前撮りに行きましょう」
「で、でも……っ! 俺、泣きすぎて顔ボロボロだし……っ」
「大丈夫ですよ。化粧でどうにかなりますし、何よりどんな貴方でもとても愛らしく、かわいいですから」
「センチェルス……」
「実験所にドレスとタキシード用意してあります。前撮り用の背景も設置済みです」
早く行きましょう!とリーヴァに急かされ四人は実験所へと転移する。
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