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少し違う気分で見る街はさっきとは違って少しだけ明るく見えた。
「そうだ……」
センチェルスたちに心配かけたから今日は美味しいものを沢山つくろう。
そう思ってウィードは今日の夕飯の買い出しをしようと思い立つ。
そう思い付くも勢いで出てきてしまったせいでお財布を忘れていたことに気づきどうしようと途方に暮れていた。
そこへやっと見つけたと2つの声が聞こえ振り返ると2つの影がウィードの前に降りてくる。
だれ?と首を傾げるとリーヴァの弟と妹だと答えた。
「ヴァイスはヴァイスっていうの」
「ボクはシュヴァルツ。ヴァルツとかヴァルって気軽に呼んでね」
「ヴァイス……? ヴァルツ……?」
「ええ、そうですわ」
「ヴァイス、例のもの」
「あ、そうでしたわ。お兄様から貴方がこれがなくてきっと困ってるから持って行ってあげなさいって言われたの」
「それ、俺のお財布……!」
はいどうぞと渡されウィードはありがとうと大事にその財布を抱きしめる。
喜んでるわねと笑いあう二人は他に用事はある?と尋ねてくれて、彼はそれじゃあお買い物手伝ってくれる?と遠慮がちに尋ねた。
2人はもちろんと力強く頷いてくれた。
「今日はどちらへ?」
「うんと……ロールキャベツと、サラダと、コンソメスープ作りたいなって。デザートはプリンアラモードにするの」
「うちに材料は何があるのかな?」
「コンソメスープの材料はあるし、主に買わなきゃならないのはキャベツと豚の挽肉と玉ねぎと、あとトマト缶と生クリームとかな……」
「いっぱい買うんだね」
「うん、トマトクリームのロールキャベツ作るの。あとレタスも買わなきゃ……。俺、みんなにたくさん心配かけちゃったから…」
「いいアイデアですわね! ではさっそく買いに行きましょ」
「みんな待ってるよ、ウィードさんの帰りを」
「うんっ」
二人を連れウィードは町のスーパーや八百屋を回る。
安くておいしいお肉や野菜を選びかごに入れると会計を済ませ次のお店へ。
自分で持つといっても二人が持つからと荷物を持たせてはくれず申し訳なさそうにするもウィードのお守役だから頼っていいとあっさり言われてしまう。
そうして一通り買い物が終わると帰ろうかと街を歩く。
その途中。
「……綺麗……」
「ウィード様、どうされたんですの?」
街の中にあった小さなアクセサリーショップのウィンドウ。
そこに飾られてたのは色とりどりの石がはめ込まれたネックレスや指輪の数々で。
ウィードはそれに引き寄せられるかのように歩み寄り品々を見ては目を輝かせていた。
「わぁ……! とっても綺麗ですわね……!」
「でもコレ、偽物、だよね。紫色の」
「でもきれい……」
「ウィード様、ウィード様、こっちに水色もありますわ!」
「ほんと……?」
あそこです!とヴァイスに引っ張られ店に入ると銀色のハートの中に水色の石がゆらゆらと揺れているものが紫の石の隣に並べられており、きらきらと輝いていた。
「かわいい……」
「ねぇ、ウィード様? 旦那様のセンチェルス様と、息子さんたちの羽衣様、咲兎様に買って行かれたら? 四人でおそろい、素敵だと思うわ」
「そうだね、ヴァイス」
「でも、俺、そんなにお金持ってないし……。無理だよ……」
「それは、ねぇ? ヴァルツにぃ?」
「ボクたちにお任せだよ、ウィードさん」
待っててと告げると二人はそのネックレスを紫と水色を2つずつ手に取ると会計に向かい綺麗な包装紙に包んで戻ってくるとはいっと渡してくる。
お金…と戸惑うウィードにいいからと二人に引っ張られるようにして店を出ると自宅へと帰っていく。
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