EP4:別れ、そして……

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どこ行くの?と問いかけるもいいところですよーとはぐらかされ教えてくれないセンチェルスに二人はただついていくしかなくて。 着いた先はアクセサリーショップで、センチェルスはリーヴァに写真の現像をお願いし店へと入っていく。 そこでやっと感づいたのかリーヴァはウィードの手を引き写真屋へ向かう。 「ねーリーヴァ? センチェルスはー?」 「センチェルス様はいいものを買っているからね、楽しみにしてよ?」 「いいものー?」 「うん。そう。きっとウィードくんも気に入ってくれると思うよ」 「ほんとー?」 「うん。だから、これを写真にしてセンチェルス様のところに行こうか」 「うん!!」 そうして写真屋で撮った写真を三枚現像して貰うとセンチェルスがいると思われるアクセサリーショップへと向かう。 現像した写真を手に待っているとアクセサリーショップから赤い紙袋を持ったセンチェルスが出てくると、そのまま袋の中身を見せてもらえることもなくウィードだけ何があるのかわからないまま三人で実験局へと戻った。 部屋に戻るとセンチェルスはリーヴァから写真を受け取り、買ってきたアクセサリーに何か細工をし始める。 なんだろう……とウィードが見守る中、彼はこれで完成ですと見せてきたのは銀細工の施されたロケットペンダントで。 キョトンと首を傾げるウィードの首にそれを掛け、ロケット部分を握らせると横のボタンを押してくださいと告げる。 よくわからないままウィードは言われるがままに横のボタンを押した。 蓋が開くとそこには三人で撮った写真がはめ込まれていて。 ウィードはたまらず俺にくれるの?とセンチェルスとリーヴァの顔を交互に見ながら聞く。 そんな彼にセンチェルスは私達とお揃いですよ、と残った2つのペンダントを自分とリーヴァの首に掛けるとウィードに目線を合わさるようにしゃがみこんだ。 「おそ、ろい……? 俺、これ……」 「ええ。お揃いですよ」 「お、れっ……うれしいっ……おそろい……、おれ……っ、」 ぎゅっとペンダントを握りしめ嬉しそうに笑いながら泣くウィードを見て二人は喜んでくれてよかったと笑いあって。 大粒の涙を流しながら泣きじゃくるウィードを抱きしめこれでずっと一緒ですからと背中を擦るセンチェルスにリーヴァはそういうことかと悟ったように目を伏せる。 カケルが聞いていたことが事実ならいつか別れがくる。 それはきっと遠くない未来に。 センチェルス様のことだからきっとなにか打開策を考えているのかもしれない。 だが、それさえもあの局長のことだ、その策すら壊してくる可能性がある。 そしたらきっと一人ぼっちになってしまった彼は耐え切れなくなってしまう。 それを防ぐための最後の切り札がきっと。 ――このペンダントなんだ。 そこまで考えているんだとリーヴァ自身も思いながら今泣いているウィードとそんな彼を抱きしめながら大丈夫、大丈夫と彼と自分に言い聞かせるように何かを決心したような表情をするセンチェルスを見ていて。 「いざとなれば僕が始末してきます。センチェルス様の幸せを壊すやつは誰であろうと許しませんから」 「リーヴァ……。そうならないためにも……どうにかしなくてはなりませんね……」 「いいんです。所詮僕は殺ししか能のない存在ですから。わかってますから」 大丈夫です、とリーヴァは全てを受け入れきった顔で微笑み部屋を出ていった。 一体どこへと言い様のない不安に駆られたセンチェルスはやっと泣きやんだウィードを抱き上げ後を追うように部屋を飛び出す。 既に部屋の近くに気配は無く、センチェルスは必死に辺りの気配を探り出す。 ――その時だった。 パンッと乾いた一発の銃弾が局長室の方から聞こえやっぱりかとそちらへ向かう。 部屋に入ると煙の出た銃口をアーヴェストに向けるリーヴァがいて。 センチェルスとウィードに気づいたアーヴェストは助けてくれよーといつもの様子で言ってくる。 「いきなり来てさー、バンッだよー。君の忠犬どういう躾してんのさー」 「リーヴァ、銃を下ろしなさい」 「……答えろ、アーヴェスト。彼をセンチェルス様の傍に居させる条件を。お前の手に渡らない条件を言え」 「リーヴァ……貴方は……」 「だから言っているだろう? ソレは貴重な化物の実験体だから渡せないと。独立する時は置いていってもらうよって」 「なら、代わりを用意すればこの子は頂けるんですね、アーヴェスト」 銃を下ろさないリーヴァの手に自分の手を添え強制的に下ろさせながら前に出るとセンチェルスはそう切り出しアーヴェストと対面する。 その問いにアーヴェストはそうだねぇ、と椅子から立ち上がると本棚からウィードのカルテを取り出し、それかこれだけの金額支払える?と彼のカルテの一番につけられた彼を買った時の金額を提示してくる。 その金額は途方もない金額で、今のセンチェルスには到底支払うことの出来そうにないものだった。 「俺……こんなに……高いの……?」 「そりゃそうさ。427は貴重な実験体だからねー。君のお父さんはとても喜んでいたよ。いい金になったって」 「俺……高いんだ……」 「ま、この金額支払うもよし、代わりを見つけてくるもよし。君にはどっちにしてもまだこの実験局で成績上げてもらわなきゃいけないからいてはもらうけどね」 「センチェルス……リーヴァ……」 「どうにかしますよ。この子を貴方なんかに渡さない為にも。……リーヴァ、行きますよ」 「……はい」 今にもアーヴェストを撃ち殺しそうなリーヴァを連れ部屋へ戻るともう大丈夫ですからと諭し、彼をもとに戻す。 彼が戻ったのを確認してから三人で一息つく。 あんな金額つけられていたんだと驚きを隠せないウィードにセンチェルスはそんなものですよと肩を竦めてみせ、これからのことを話し始める。 きっとこれからアーヴェストによる妨害が酷くなることも踏まえて出した結論はリーヴァにウィードの代わりを探させることで。 頼めますか?と問われたリーヴァは自信満々におまかせ下さい!と笑って答えた。 「それでは明日から行動開始、ですね」 「はい! 頑張ります!」 「センチェルスのことは俺が守る!」 「心強いですね、とても。私も貴方の事を守りますよ、ウィード」 「うん!」 それぞれの想いを胸に三人は狭いベッドの中へ入るとそのまま眠りについた。
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