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それから二年後。
アーヴェストは突然センチェルスにあと一ヶ月でここからこの前言った場所の実験所を空け渡すから独立しろと告げてきた。
それは余りにも急な知らせで、受け入れきれないと抗議するもそれなら427を今すぐこちらへ戻せと突きつけられて。
「ここに来る時の条件と違うじゃないですか! この子を好きにしていいと言ったのは貴方でしょう!?」
「うん、言ったよ? 好きにしてくれて構わないって。でもね、うん、君を自由にしすぎた私にも責任はあるんだけどね、ソレはもう君にとって実験体ではない、そうだろう? 大切な家族、違うかな?」
「……っ、それが、どうしたというのですか。別に構わないでしょう? 貴方には関係のないことだ」
「関係? 大ありさ。だってソレは僕のモノ、だからね? あくまでも僕が買った所有物を君に貸し出しているだけ。それなのに君は、僕の所有物であるソレを勝手に家族にしようとしてる。それは泥棒と同じじゃないか?僕はソレを手放すなんて言ってないからね?」
「……ですからっ、この子の代わりを今探しているんでしょう? 貴方から無差別に送り付けられる実験を熟しながら、必死に……!」
「でも見つけられないんでしょ? じゃあ仕方ないよね?」
仕方ない仕方ないと余裕の笑みを浮かべるアーヴェストに限界を感じたのかセンチェルスは彼の胸倉を掴みふざけるなと睨みつけるがそれでも余裕なアーヴェストはそれならさっさと探すか払いなよと言うだけで。
アーヴェストが言うことは確かに正論で、センチェルスは彼から手を離すと怒りが収まらないまま自室へと戻っていく。
「センチェルス様……。アーヴェストは……?」
「まったくだめでした。あいつは私達とウィードを完全に引き離す気です」
「それでは独立までの期限は…」
「……あと一ヶ月です」
「……一ヶ月。この二年でさえ探し出せないというのにあと一ヶ月でウィードくんの代わりを探すかあの金額を支払えと言うんですか、あの悪魔は……。やはり殺すしか……」
「それも視野には入れてます。……ところでウィードは?」
「ぐっすりと眠ってます。貴方といられる時間があと僅かと知ってからというものウィードくんずっと泣き通しで……」
「……そう、ですか……」
母親から貰ったうさぎのぬいぐるみを抱きしめながら眠るウィードの表情は疲れきったように弱々しくて。
彼の頭を撫でると小さく呻いて目を覚ます。
だけど彼はセンチェルスの姿を見つけると泣きすぎて真っ赤になった目からまた涙を零し一人にしないでと泣きじゃくって。
私はここにいますよと抱きしめてなぐさめても置いてかないでと泣くだけで。
そんな日が何日も続いていた。
「ウィード……。大丈夫ですよ、置いていきませんから……。そのためにこうして探しているんでしょう?」
「でも……見つからなかったら……っ!」
「見つけます。必ず。だから泣かないでください、ウィード……」
「センチェルス……」
「大丈夫だよ、ウィードくん。センチェルス様なら必ず約束を叶えてくださるから、僕も頑張って探すから。ね? だから泣かないで? ウィードくん……」
「リーヴァ……」
「大丈夫、大丈夫。ね? だからそろそろ泣き止んでくれると嬉しいな」
「ほんとにほんと……? 約束してくれる?」
「約束です。必ず、貴方を連れていきます」
約束とセンチェルスは小指を泣きじゃくる彼の小指に絡め、約束ですと指切りをする。
ウィードはごしごしと涙を拭うといつもの笑顔を向けた。
これもいつも通りできっと明日にはまた元に戻ってしまうのをわかっている二人はずっとこの日々を繰り返していた。
それでもこうしてそばにいるのは彼の笑顔を守りたいがためで。
「ごめんね、センチェルス、リーヴァ……。俺……怖くて……」
「わかってますから。大丈夫ですよ」
「わかってるの……。寂しくなったらこれを見ればいいって……。見つからなかったらきっと俺はセンチェルスたちとお別れになっちゃうから……。今から耐性つけとかなきゃって……。でも……怖くてっ」
「ウィード……」
「でも……大丈夫だよね……っ? 俺センチェルスたちと一緒にいけるよね……?」
「ええ。連れて行きます。何が何でも」
大丈夫ですからとウィードを抱きしめ言い聞かせる日々。
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