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一方、空き実験所に着いた一行は所内の設備を確認の後、センチェルスの元に集まっていた。
「センチェルス様、こいつら、どうしますか? 殺しますか?」
「リーヴァ。いいから私の後ろにいなさい。……それで?ウィードを救い出す方法とは一体なんですか? アヤセ」
「いないなら作っちゃえばいいのよ、所長さん? あの子の代わりを」
「……作る?」
アヤセと呼ばれた金髪碧眼の男は少し高めの声でそう告げ、その言葉に周りの元局員達は頷く。
突然の提案にセンチェルスは驚くもそうか……とすぐに納得したように考え込む。
「局長さんの要望はウィードちゃんの代わりを探すか彼を買った金額を支払うことでしょ? なら作っちゃえばいいのよ、その異形者というやつを!」
「確かにそうですが、問題はその材料です。こんな廃都近くではその材料すら見つけられない。暫くは局長から送られて来るものでどうにかしますが、それが尽きれば終わりですよ」
「そこはー、まぁ、所長さんの腕の見せ所ってところじゃない?」
「それはそうですが……。なぜ貴方たちがそこまでしてウィードを? それより何故貴方たちがウィードの事を知り、その彼の譲渡条件を知っているのか、まずはそこを話して頂けますか?」
確かにそうね、とアヤセは納得したように徐ろに袖を捲りあげ、140と刻み込まれた腕をセンチェルスに見せつける。
それを合図に後ろにいた人たちも各々、それぞれの数字が刻み込まれた傷を見せてくる。
これでわかるかしら?とにやりと笑うアヤセと何か清々しそうな表情の彼らを見てセンチェルスはそういうことですかとフッ……と笑みを浮かべ座っていた椅子から立ち上がった。
「ジャンクが元主に牙を向く、といったところですか。なかなか面白いじゃないですか」
「センチェルス様……彼らは一体……」
「元被験体とその管理者ですよ。使えないジャンク品と管理人をアーヴェストはその処分がてら私を追い出した、といったところでしょう」
「そう。そしてあたしたちジャンク品は逃げ出さないように局長さんの部屋の奥に閉じ込められていたわけ。まぁそこでウィードちゃんに会ったんだけど。頭のいい所長さんならここまで言えばわかるわね?」
「貴方たちはこのままアーヴェストやリリィにいいように使われたまま引き下がるわけにはいかない、そして私はあの子を取り戻したい。だからアーヴェストを見返すために共闘しよう、そういうことですね?」
「話が早くて助かるわ、所長さん」
「いいでしょう。どの道私たちはこの場所でどうにか生き延びるしかない。ならば、あの子の代わりを作り出し、取り戻す、それを第一目標とし、後々のことはそのうち考えましょう」
それでいいですね?と問いかけるとええ、とアヤセたちは頷いた。
その時、丁度いいタイミングでアーヴェストからの仕送り品が届き始め、総出でそれをそれぞれの場所へと運び始める。
それを見ながらセンチェルスはこの方が手っ取り早いと実験所の時を新築同様までに戻す。
その光景にアヤセ達は驚きの声をあげ、一瞬で綺麗になった所内を見渡す。
「ぼーっとしてないでさっさと終わらせますよ!早く休むためにもきびきび動いてください」
「はい、センチェルス様。……ほら、お前たち、さっさと動きなよ」
「リーヴァ、貴方もですよ。でないと夕飯、抜きますからね」
「あー!! そんな! ひどいです! 誰よりも働きます! センチェルス様!」
リーヴァはその場の誰よりもキリキリ動き、片付けを始め、それを見てアヤセ達もやりましょうか、と片付けを再開した。
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