EP1:解放の糸はいとも容易く

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「あー面白かったー!」 「そうだな。とても愉快なものを見せてもらった」 「癖になってしまいそうです」 屋敷についた三人はエルザークの部屋で夕食を食べながら今日の戦闘のことを話し合い、次の狙いをどこにするか作戦を練り始める。 そろそろ大きめのところを攻めてみてもいいな、などと話しながら。 「ところで、汝の言霊というのはいつまで効力がある?」 「ん? んーとね、可能な範囲でなら指定は可能だよー。魔王さんもさっき行言ってたけど永遠にーとか末代までーっていうのは流石に無理。今のボクの能力的に一週間が限度かなー」 「なるほど……。つまり、レイズにかけたあの言霊はあの場限りで切れてしまっている、ということだな?」 「そ。日数の指定がなかったからねー。一日で切れちゃうんだー」 「でもすごいよね、アーメイ。一人旅でここまで成長できるなんて」 すごいすごいとアーメイの頭を撫でるセンチェルスにでしょー!と自慢気に胸を張る。 その様子を見ていたエルザークはなにか胸に蟠りが出来たのかむすっとした様子でセンチェルスを見、空いていた片方の手を自分の頭の上に乗せる。 突然のことに驚くセンチェルスに視線も合わせずずっと黙っているエルザークにアーメイはなにか感づいたらしく、センチェルスに撫でて欲しいんだよーとこそこそと耳打ちする。 なんでいきなり……と思いながらもそのまま頭を撫でると満更でもないような笑みを浮かべていて。 「我も頑張ってる」 「はい。よく頑張りましたね、エルザーク様」 「ん。だからアーメイばかり撫でるでない」 「はい。今度から気をつけますね」 「それでいい」 満足したのかセンチェルスの頭をぽんぽんとしたあと自分の頭を撫でていてくれた手を取り、手の甲にキスを落とすと手を離す。 魔王さん子供みたいだなーとにこにこしているアーメイの視線に気づいたエルザークはなんだと睨むがなんでもないよー?とかわされる。 暫くして食べ終わった食器をワゴンに乗せ、センチェルスは一人キッチンへと向かう。 残された二人はテーブルに地図を広げこのあとどうするのかを模索する。 ある程度街や国を沈めてきてはおり、このまま中心国を沈めてもいいが、その周りの提携国を潰さないと反撃されたら面倒だと言う。 だが、一つ一つ潰していたら時間ばかりが経ってしまいいつまで経っても目標が達せないのでどうしようかなやんでいるとのこと。 センチェルスの術も範囲が限られており、一度に2つの国の時を止めるのは不可能でどうにも手詰まってしまっているようで。 「まぁ何事も妥協は必要だよね……。でもとりあえず動くならあのレイズとかいうやつが重症になっている今じゃない?」 「それは一理ある。やはり狙うなら今か……」 「それに、聖夜くんを攻略する手立てがあっちにないとも限らないし」 「時を止める水晶の存在か。あれを発見でもされたら面倒だな……」 「そ。だからさ、ぱぱっと沈めちゃおうよ!」 ボクはいつでも動けるよと笑うアーメイにイマイチ乗り気でないようで、決断が出来ないエルザーク。 何かひっかかるようなことでもあるの?と聞くとセンチェルスがな……と言葉を濁らせる。 そこへ片付けを終わらせたセンチェルスが帰って来、二人の視線が彼に集まる。 よく状況がわかっていないセンチェルスは首を傾げるが、自分も作戦会議に加わろうと席につこうとする。 そこで何か思いついたアーメイが駆け寄っていき、何をする気だ?とエルザークが見守っていると彼はセンチェルスの目をじっと見つめ、“ボクが起きてもいいよと言うまで眠ってて”と言葉をかけると真っ赤になったアーメイの瞳を見ながら言葉を聞いたセンチェルスはその言葉通り崩れ落ちるように眠りについた。 倒れ込むセンチェルスをアーメイは小さな体で担いで空いているベッドへ寝かせるとエルザークに向き直り、話しを続けようかと笑う。 「で? 聖夜くんの何が気掛りなの?」 「……センチェルスの体がな……心配なんだ」 「聖夜くんの? なんで?」 「あやつの体の成長が止まってしまっているようなんだ。両親の時を破壊した影響なんだろうが……。覚悟はしていたが肉体も魔力も成長がもう……」 「あー……。ボクと一緒か……。ボクも10歳辺りから成長止まっちゃったみたいだし……。でもいずれは来ることだったじゃん?」 「そうなんだが……。それに確かにあやつは強い。犠牲にする時も少なくなってきてはいる。だがな……」 「聖夜くんの成長が止まってしまった挙句に傷付けてしまうのが怖い?」 「………」 アーメイの言葉に黙ってしまうエルザークは立ち上がるとセンチェルスの元へいき眠る彼の額にキスを落とす。 愛しているからこそ傍に置いておきたい。 だけど、自分の傍にいれば必ず傷付いてしまう。 これ以上愛する者が傷付く様を見ていたくない、そう告げて。 それを聞いていたアーメイは聖夜くんなら大丈夫だと思うけどなーと言ってのけるがエルザークはそれにさえ否定をした。 「全く傷付けない、なんてそんな綺麗事が通じるのは御伽噺の中だけだよ、魔王さん。どうしたって傷付いてしまう。それがヒトでしょ? それをどの程度までで留めることが出来るのか、それが魔王さんの腕の見せ所じゃないかな? 聖夜くんだってわかってるはずだよ。魔王さんについていくって決めたあの夜から」 「……」 「全く傷付けたくないならどこか誰も知らないところに閉じ込めるって手だってある。だけどそんなことされて聖夜くんは正気でいられると思う? 体は傷付かなくても心が死んじゃうよ?」 「……」 「それなら少し傷付くことがあったとしても慕っている人の傍にいたいって思うのは普通のことじゃないかなぁ。ま、ボク子供だからよくわかんないけどー」 「ふむ……。そうか……。ならセンチェルスがあまり傷付かないように最善策を練る必要があるな……。最悪の状況を考えて……」 「そうだね。魔王さんが万が一封印された時のことを考えておく必要があるもんね」 「ああ」 そう言って少し考えたエルザークはセンチェルスの額に手をかざし少しだけ彼の力を自分の中へ取り込み、これくらいで大丈夫かと手を引っ込めるとアーメイにセンチェルスの様子を見させ自分は夜の見回りへと飛び立っていく。 エルザークを見送ったアーメイは眠るセンチェルスの頭を撫でながらその頬に口づけ、そのまま“起きてもいいよ”と声をかけ言霊を解いた。 小さく呻き目を覚ましたセンチェルスは辺りを見渡しエルザークを探す。 お外の見回りに言ってるよと答えると自分も……と起き上がるがまだ解けたばかりの身体は言うことをきかずそのまままたベッドへ身を沈めた。 「一体何が……」 「ちょっとね、魔王さんとお話しがあって聖夜くんには眠ってもらってたの。ごめんね?」 「エルザーク様と……?」 「そ。これからの事とか、ね。大丈夫。聖夜くんは何も心配しなくていいんだから」 「でも私は……」 「大丈夫。魔王さんはとっても強いもん。聖夜くんが心配するようなことは起きないよ」 「そう……?」 「うん。だから、大丈夫。ね? ……聖夜くんを傷付ける奴らは誰であろうとボクが許さないから」 「アーメイ……?」 怖い顔してる……と頬に手を添えられるとアーメイはすぐにいつもの笑みを浮かべ、大丈夫だよと繰り返す。 それでも不安そうな表情のセンチェルスの頭を撫でながらボクたちは友達でしょ?と問い掛け、だから信じて?と頬にキスをする。 「さ、もう夜も遅いから寝よ? 魔王さんも聖夜くんがいい子に眠って待ってればすぐに帰ってきてくれるから」 「ん……」 「うん。そう、いい子いい子。聖夜くんはいい子だね」 よしよしと頭を撫でてられセンチェルスは吸い込まれるように眠りにつく。 その直後、エルザークが見回りから帰って来、自分が離れている間の状況をアーメイから聞くとそのままセンチェルスの隣に入り眠ってしまう。 そんな二人を見てアーメイは近くのソファーに横になり眠りについた。 それから数日。 例の三人に邪魔されながらもエルザークたちは暗黒化計画を少しずつ進めていた。 そんなある日。 「はぁ……」 「エルザーク様、どうかなされました?」 「あー、センチェルスか。大丈夫だ、心配するな」 「ですが……」 「魔王さんもしかして……」 「言うなアーメイ。大丈夫だ」 ベッドに倒れたまま枕に顔を埋めてため息を繰り返す彼に心配そうに近づくセンチェルスを大丈夫だからと遠ざける。 心配そうにするセンチェルスにどうすればいいのか耳打ちしようとしたアーメイを一睨みし黙らせる。 そんな日が何日か続き、街を沈めることにも少しずつ支障が出始めて。 私にできる事があれば言ってくださいと言っても下がれと言われるばかり。 「エルザーク様……」 「暫く我に近づくな……。センチェルス……」 「ですが……」 「魔王さーん。もう無理だよー、観念して言っちゃえば?」 「黙れアーメイ。いいからセンチェルスを下がらせろ」 「むぅ……。わかったよー。もう……。ほら、聖夜くん、お部屋戻るよー」 「で、ですが……っ、エルザーク様が……」 いいからーとアーメイはセンチェルスの手を引き別室へ向かう。 どうしたらいいのかと考え込んでしまうセンチェルスにいいから次の作戦のために休んでてーと強制的に眠らせてしまう。 ベッドに運んだあと苦しんでいるエルザークの元へ戻るとベッドの方からくぐもった声が聞こえやっぱりねーとため息をついた。 「魔王さーん。自慰ばっかしてるとバカになるよ?」 「う、るさいっ……」 「はぁ……。聖夜くんに言えばいいのにー、抑えきれないからヤラせてほしいって。大好きな人を抱きたいって思うのは普通のことじゃないの?」 「黙れっ、あやつに、そんなこと……出来ん……っ」 「はぁ……。純粋なんだかなんだか……。耐えきれないからってボクだけを呼びつけるのそろそろやめてほしいんだけど? 一応ボク10歳の子どもだよ? 肉体的には」 「バカも休み休み言え……っ。とうに18になっているくせに……っ」 「はいはい。ほらヌいてあげるから座りなよ、もう」 やれやれといった様子でアーメイはエルザークの元へ向かう。 その気配に気づいたエルザークは重い体を起こしベッドに座る。 エルザークの足の間に座り込んだアーメイは反り勃ったそれを小さな口へと含み、そのまま優しく愛撫するように舌を絡ませて口を動かす。 小さな口には全ては収まりきらず、先っぽを吸ったり、全体を舐めていたりして溢れてくる汁を啜りながら必死に愛撫を繰り返す。 愛撫に反応するようにエルザークは声を押し殺しながらも感じていて。 「ふっ……魔王さん……? もうイッちゃう……っ?」 「う、るさい……っ、いいから口を開けろ……っ」 「ふぁーひ」 ぱくっとものを咥えたときだった。 エルザークのものから白濁が発射され、アーメイはそれを必死に溢さないように飲み込んだ。 すべてを飲み干すことはできず、口の端から溢れる白濁をエルザークは指で拭い、口を離したアーメイに舐めさせ、まだ足りないのかエルザークはアーメイを乱暴にベッドに押し倒すと行為を続けようとする。 そんな彼にアーメイは仕方ないなぁ…とその先まで付き合う羽目に。 「ちょっ……早く楽になりたいからって……っ、いきなり挿れない、でよ……っ! 痛ったいなぁ……っ!」 「うるさい、黙れ」 「むぅ……それが人に処理させてる人の態度ぉ!? って…や、だ…っいき、なり、動か…っ!」 「黙って感じてろ、アーメイ。すぐ終わる…っ」 「ぅ…や、ぁ…っ! そ、こっ…! だめだ、って…っ! ま、っ、ん、あぁっ…!!」 エルザークが動くたび、アーメイは与えられる快楽で喘ぐしかなく、暴言を吐きながらも彼に付き合っていて。 彼も彼で早く自分が楽になりたいがために小さな体に容赦なくその欲望を突き立てていた。 「っ、もう、出る…っ!」 「ぁ、もっ、はや、くっ…だ、しなよ…っ!」 わかってると彼がその中にすべて吐き出したあとすぐ、アーメイも同時に達する。 その後、アーメイに事後処理までさせると服を整え一息つく。 そんな彼にまったくもう……と脱がされた服を床から取り上げ着替えるとベッドに倒れこみ、はぁ…と大きなため息をつき、座っているエルザークを見る。 「ほんと……。あのさ、相変わらず濃すぎるよっ、魔王さん! 溜めすぎ!」 「ふんっ」 「あのさー、ボクね? 魔王さんの愛玩人形じゃないんだよ? わかってる? そろそろさ、聖夜くんにお願いしてもいいんじゃないの? 好きな人、なんだしさ?」 「うるさい。あやつは父親に愛玩人形のように犯されて来たんだ、そんな簡単に頼めるわけないだろう」 「そんなもんかなぁ……」 「初めて愛したやつなんだ、大切にしたいと思う気持ちはまだお子様な汝にはわからんか」 「そのお子様に性欲処理させてるのはどこのだーれー?」 そう顔を覗かれ、知らんなと立ち上がったそのときだった。 扉が開き入って来たのは枕を抱えて寂しそうにしているセンチェルスで。 なにをしているんですか……?と入ってきた彼にエルザークはなんでもないと頭を撫でながら触れるだけのキスをする。 そのままベッドへ連れて来るとそのままセンチェルスを抱きしめて寝てしまい、身動きの取れないセンチェルスはじっと彼の抱きまくら代わりに徹していた。 そんな二人を見ながらよく我慢できるなーとぼそっと呟いたアーメイはそのままベッドを出るといつものようにソファーに身を沈めた。 「聖夜くんさ、魔王さんのこと好き?」 「え? えっと……好きというか……慕ってはいるよ?」 「じゃあ魔王さんとその、性行為的なのは無理?」 「あ、え、と……。……できればあまりしたくはないけど……エルザーク様が望むのなら……」 「そっかー」 「もしかして最近エルザーク様がため息ばかりついているのって……」 「んー、まぁでも、魔王さんも無理矢理にはシたくないって言ってるからねぇ……。無理しなくてもいいとは思うけどこのままだと色々支障がでてくるんじゃないかなぁとは思うけど……」 「私がお相手を……」 そう思いながらエルザークの顔を見上げ、眠る彼に触れるだけのキスをし、私で良ければ……とそこまで呟いて言葉を飲み込んでしまう。 自分を救ってくれた人の頼みならなんでも聞いてあげたい。 そう思うのに、言葉が出てこない。 なんて不甲斐ない存在なんだろうと泣きそうになる。 そんな彼に目を覚ましたエルザークは無理をしなくてもいいと優しく微笑みかけた。 「でも私は……」 「いいんだ。我は汝とこうしていられるだけで幸せなんだ」 「ですが……辛いのでしょう……?」 「なに、またアーメイにさせればいい」 「ボクさーそういうの担当じゃないんだけどー。ねー、純粋無垢な子どもになんてもの咥えさせてんのー?ねー」 「うるさい。……だから、な?」 「……私、役立たずですね。自分を救ってくれた人の願いですら、聞いてあげられない……。こんな私なんて……っ」 それ以上は紡がせない。 そう言わんばかりにエルザークは泣き始めたセンチェルスに噛み付くようにキスをする。 息をつく暇すら与えることなく。 呼吸も苦しくなった頃、やっと止まったかと思うとエルザークを見つめ、声にならない声で何をするんですか……と尋ねる。 その問いにエルザークは怒ったように黙ってしまい、それを見ていたアーメイはしーらないと眠りについてしまう。 なんで怒っているのかわからないセンチェルスはただエルザークを見上げるしかなくて。 「エルザーク様……?」 「言わせぬ、それ以上は。言ったらどうなるかわからんぞ、センチェルス」 「ですが……」 「まだ言うか? その喉掻き切ってやろうか? 言葉など紡げなくしてしまえば、声さえ出なくしてしまえばその薄汚い言葉発せなくなるだろう?」 「あ、あの……」 「我の姫だというのにいらないだの消えたいだの死にたいだのそんな言葉、発することは我が許さぬ。我は言っている、汝と無理矢理に体の関係を持とうとは思っていないと。このままの関係でも構わないと。自分の愛しているものに自分が傷つけるような、そんなゲスな真似、我にはできぬと。その言葉すら汝には理解できぬか?」 「エルザーク様……。申し訳ございません……」 「……すまん、きつく言い過ぎたな。まぁその、あれだ。愛しているからこそ大事にしたい、ただそれだけなんだ。わかってくれ」 「はい……。申し訳ございません……。ですが、わかっていただきたいのです……。私のこの命は貴方に救われた身……。だからこそできることなら応えてあげたいのです……。体の関係だってまだ怖いですけど、私は……」 「そうか……」 よしよしと頭を撫でいつもの笑顔を見せ、無理はしなくていいとエルザークは彼の額にキスをして終わらせようとするも、それでも応えたいと訴えるセンチェルスに困ったような表情をする。 がんばりますからと自分の服のボタンに手をかけるその手を掴み、もう大丈夫だからと抱きしめると、おやすみと優しく声を掛け、優しく、子どもを寝かしつけるように撫でられ、センチェルスは抗えない眠気に襲われそのままエルザークの腕の中ですやすやと眠りについてしまう。 それを見計らってエルザークも眠りに落ちていった。
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