飛沫 - HIMATU -

17/17
前へ
/17ページ
次へ
 ふと思い立って、大輔の姿を探す。誰かがぼくの肩にぶちあたってよろけた。足がもつれた。前のめりに倒れる。山から離れたぼくを助け起こしてくれる者はいない。博多の町の喧騒が、地鳴りとなって鳴り響いた。鈍い衝撃に頭を眩ませながら、大輔の姿を探した。沿道に友則や七海の姿を探した。  アスファルトにつっぷしながら、熱にうなされた山が遠ざかっていくのを、ぼくはただ見ている。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加