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その横で腹を抱えて笑っているのが友則。締め込み姿のぼくらに紛れて、ひとり学制服なので目立っている。今日の今まで、こいつのことを親友だと勘違いしていた。赤く手形のついたぼくの尻を指差し、ひいひい笑い転げるなんて、こいつもロクなヤツじゃない。そのまま過呼吸による呼吸困難で、あの世へ行ってしまえ――。
ぼくと大輔、友則の三人はガキの頃からずっと同じ山を舁いてきた。「山を舁く(かく)」とは神輿を担ぐことだ。博多の町には大きく七つの流れがあり、山笠で担ぐ神輿も違う。簡単に言えば町内会ごとに分かれている。
ぼくらはガキの頃からずっと同じ町に住んでいて、同じ山を舁き、同じ市立の小学・中学校に通った。修学旅行の思い出も、悪さをして叱られた思い出も全部一緒だ。同じ空を見て、同じ博多の町の空気を吸ってきた。高校へ入学してもしばらくそれは変わらなかった。いい加減代わり映えのない顔ぶれに、嫌気の差すこともタマにはあるけれど、それは一生変わらないのだと真剣に思っていた。
突如ホースの矛先がぼくらに向けられる。水飛沫に視界を奪われ、ぼくと大輔は「ひゃ!」と声を揃えた。
「情けない声出さんと! 博多んもんが聞いて呆れるとよ」
溢れる水の向こうに、ホースを構える七海の姿がぼんやり見えた。町の大工の箱入り娘で、同い年の幼馴染だ。この調子でぼくら三人の尻をいっつも引っ叩いてくる。
「身体のあったまとらんけん。勢い水は、まだ早かっ!」
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