飛沫 - HIMATU -

3/17
前へ
/17ページ
次へ
 大輔が七海に飛びつき、その手からホースを奪った。裸同然の大輔が七海の細い腕に触れるのを見て、ぼくは思わずドキッとして目を伏せた。  調子に乗った大輔がそのままホースの水を友則に向ける。 「うわ、なにすっとね! お前、頭がイカれとるばい」  友則が叫ぶ。学生服姿で、まさか標的にされまいと高をくくっていた友則の鼻っ面に、容赦なく放水する大輔。むきになった友則が大輔に飛びかかった。もつれるホースの水が跳ねあがり、大きく弧を描く。小学生どもが逃げ惑う。日差しに水飛沫がきらきらと輝いた。 「こりゃあ、祭りの前から大騒ぎね」  七海が蛇口をしめると、のたうち回っていたホースは途端に勢いを無くし、濡れた地面に横たわった。 「制服……びしょ濡れよ、どうすっとね!」  釈然としない様子の友則に「気にするな、気にするな」と大輔は友則の肩に太い腕をまわした。 「少しくらい濡れとった方が、水もしたたるええ男よ! なあ?」  とぼくに同意を求めてきたので、 「知るか」  と手形のついた尻をさすりながら答えた。  高校を辞めてしまった大輔と、こうして肩を並べるのも久しぶりだった。久しぶりすぎて、顔を合わせるのも少し気恥ずかしい。 「お前ら見とぉと、そこらのガキと区別つかんな」  小気味のよい声に振り返る。     
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加