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大輔が七海に飛びつき、その手からホースを奪った。裸同然の大輔が七海の細い腕に触れるのを見て、ぼくは思わずドキッとして目を伏せた。
調子に乗った大輔がそのままホースの水を友則に向ける。
「うわ、なにすっとね! お前、頭がイカれとるばい」
友則が叫ぶ。学生服姿で、まさか標的にされまいと高をくくっていた友則の鼻っ面に、容赦なく放水する大輔。むきになった友則が大輔に飛びかかった。もつれるホースの水が跳ねあがり、大きく弧を描く。小学生どもが逃げ惑う。日差しに水飛沫がきらきらと輝いた。
「こりゃあ、祭りの前から大騒ぎね」
七海が蛇口をしめると、のたうち回っていたホースは途端に勢いを無くし、濡れた地面に横たわった。
「制服……びしょ濡れよ、どうすっとね!」
釈然としない様子の友則に「気にするな、気にするな」と大輔は友則の肩に太い腕をまわした。
「少しくらい濡れとった方が、水もしたたるええ男よ! なあ?」
とぼくに同意を求めてきたので、
「知るか」
と手形のついた尻をさすりながら答えた。
高校を辞めてしまった大輔と、こうして肩を並べるのも久しぶりだった。久しぶりすぎて、顔を合わせるのも少し気恥ずかしい。
「お前ら見とぉと、そこらのガキと区別つかんな」
小気味のよい声に振り返る。
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