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「女見つけて、結婚してぇ……ダメダメ。やっぱ想像もできんばい」
そう言う大輔が子供を抱いている姿を想像した。黒く太い腕がしっかり我が子を抱きあげている。コンタクトではなく眼鏡姿だ。その方が父親らしい。傍らにいる母親役は、七海だった。苦しいのは息があがりはじめたばかりだけではなかった。のび太と静香ちゃんが結婚する未来は、ぼくらにとってもうそう遠い未来ではない。
ぼくは、大輔の焼けた太い腕を見ていた。
「おまえ、それどこで焼いたと。尻までまっ黒か。サロンいったと?」
まさか、と大輔はにやける。
「あんとこ、恥ずかしゅうていかん。現場で焼いたと。今んとこもう棟上げしたけん、屋根の上で素っ裸になるとは気持ちよかとよ」
浮かべる悪戯っぽい笑顔を、懐かしいと感じた。
大輔が高校を辞めてから、今年は二度目の山笠だった。突然俺は手に職をつけると、大輔は大工の棟梁に弟子入りをしたのだ。それは七海や清さんの親父さんだった。大輔にどんな心境の変化があったのかはわからない。そんなことを面とむかって聞いたこともなかったし、ひと足先に社会人になってしまった大輔とは、会う機会もしだいに減っていた。
「おまえ、何やっとおか。清さんにいいつけるばい」
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