飛沫 - HIMATU -

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飛沫 - HIMATU -

飛沫-HIMATU- 「なんな、太一! お前のケツまっ白かぁ」  締め込み半ケツ姿のぼくの尻に目がけて、野次と共に大輔の平手が飛んできた。 「やめろ、やめろ!」  ぼくは女みたいに腰をくねらせる。ぱんっと乾いた音が辺りに響き、痺れる丸出しの尻。皆の笑い声が日差しに弾けた。夏日に照らされたぼくらの真っ黒な影が、濡れたアスファルトにじゃれ合う。 「オイッサ、オイッサ」  と気の早い男衆が、かけ声を合わせ始めていた。小さな水はっぴを一丁前に着込んだ小学生達がホースの水に戯れる。足元を濡らす水に、高い声をあげて走り回っていた。  博多祇園山笠、追い山馴らし。今日を境に那珂川(なかがわ)から石堂川の一帯は、祭りの興奮に呑み込まれていく。博多の町を賑わす、夏の風物詩だ。ぼくらは商店街の外れにある「山留め」と呼ばれる神輿の出発点で、思いおもいに身体をほぐしていた。  ぼくのケツを叩いてきたのは大輔。図体ばかりはでかくて、場所もとるし大飯食らいの割りには燃費も悪い。最近流行りの省エネ設計とは真逆をいく、何とも野蛮で乱暴なヤツだ。     
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