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救ってあげたいのはやまやまだが、事件が起きるたびにそんなことをしていたらきりがない。
それに、死んだばかりの者にあなたはもう死んでいるのですよ、と言い聞かせるのは実はなかなか難しいことである。
時が経って、自分たちがもうこの世に存在しない者なのだと理解し自然に上にあがっていくしかないのだ。
一転して、テレビからは出演者たちがローカル線に乗ってご当地グルメやパワースポットを巡る楽しげな話題が流れてきた。
そのパワースポットであるどこかの滝がテレビに映し出された瞬間、冬弥はテレビの電源を切ってしまった。
流れ落ちる滝に、浮遊する無数の霊たちの姿が視えてしまったからだ。
気を取り直し冬弥は再び食事をとる。
すべての料理を胃におさめた冬弥は満足そうに一息つく。
しかし、孤月の前に置かれた皿はやはり手つかずのままであった。
冬弥はその皿も取り上げラップをかけて冷蔵庫にしまってしまう。
「さて、コーヒーでもいれてのんびりしようか」
後片付けを済ませ、午後は積んでいる本を読みあさろうと立ち上がったところへ玄関のチャイムが鳴った。
誰だ? というように冬弥と孤月は顔を見合わせる。
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