第1章 霊能師 稜ヶ院冬弥

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 子どもの頃から霊が視えてしまう冬弥は、そのことでひどく悩まされ続けてきた。  自分が視えるのだから他人にも視えているのだと信じて疑わず、回りの者たちに気味悪がられた。  そのことで小さい頃はいじめにもあい、嘘つき呼ばわりをされたことも数知れない。  霊に話しかけたり、時には一緒に遊んだり、はたから見れば一人で何をやっているのだろうと引かれてしまうこともたびたび。  親でさえ息子の奇行に頭を悩ませていたらしく、もしかしたらこの子はおかしいのではないかと疑われ何度か病院にも連れて行かれた。  やがて、霊は普通の人には視えないのだということに気づいた冬弥は、霊たちを無視するよう努力した。  それでも、道を歩けばあたりまえのように霊は存在するし、生きている者との見分けがつかないときもあるから、うっかり話しかけてしまうこともしばしば。  先ほどのようにテレビのニュースを見れば事故で亡くなった人の姿や、その時の背景までもが頭に流れ込んできてしまう。  さらに困ったのは、冬弥が視える人間だと霊の方が気づき、相手から近寄ってくることである。  やがて、大人になるにつれ、視える力を自分の意思でコントロールできるようになり、様々な経験を経て今では持って生まれたその能力をいかし霊障相談を行っている。  因縁、土地、家族問題、先祖の供養。  霊的なものが絡む恋愛相談などなど。  霊視から始まり、除霊や浄霊。必要とあらば降霊も手がける。  この仕事を始めてまだ日が浅く、依頼は少ないがそれでも最近は少しずつ口コミで依頼者が増え始めてきている。
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