プロローグ

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「どうやらこの細い道を行くと近道のようだ。峠を越えればかなり短縮できるかも。渋滞もないだろうし、早く家に帰れるんじゃないか?」  それは通常の一般道から脇道にそれた、峠を越える狭い道であった。 「ねえ、途中に神社があるみたい」 「こんな山奥にか?」 「寄って行かない? この子が無事に生まれてくるようにってお祈りしたいし」 「そうだな……」  嬉々とした声を発する妻に対し、男の口調はあまり乗り気ではない様子であった。  明日は仕事だし、できることならこのまま真っ直ぐ寄り道などせず帰りたい。  正直、疲れていたし、こんな山奥の神社など気味が悪い。  実家に帰省中はどこにも遊びに行かず、年老いた両親や集まった親戚の相手を嫌な顔ひとつせず、それどころか明るくにこやかに接してくれた妻のことを思うと嫌とは言えなかった。  決して口には出さなかったが、身重の妻にとって大変だったに違いない。  気遣いも半端ではなかっただろう。  そんな妻の希望くらい、きいてあげるべきではないか。  男はよし、とうなずいた。 「寄ってみよう。なかなか神社に来るなんてこともないからな」  ナビの画面に神社のマークが表示されている。久見(ひさみ)神社というらしい。  徐々に車が神社へと近づいていく。  ようやくそれらしき場所へ辿り着くと男は車を止めた。
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