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それから三日後、大学の授業が終わった夕方、冬弥は約束した時間よりも五分ほど早めに植村宅に到着した。
玄関前で立ち止まった冬弥は家全体を見渡し眉をひそめる。
中古で購入したと言っていたが、日当たりもよく、今風にリノベーションされたようで外観も古くさい印象も感じられず、明るそうな雰囲気の家であった。
普通の者ならそう思うだろう。
しかし、冬弥には視えていた。
その家が黒いもやのようなもので覆われ、眩しい日射しが降りそそいでいるにもかかわらず、陰鬱としたものが渦巻いているのを。
側にいた孤月を見下ろし冬弥はうなずくと、インターホンを押す。
待っていましたとばかりにすぐに植村良子が玄関口に現れた。
「よく来てくださいました。どうぞ入ってください」
「失礼いたします」
頭をさげ、冬弥は玄関に足を踏み入れた。
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