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「今日は授業がないからね」
休みの日は趣味の料理を朝から時間をかけて作り、のんびりと過ごすのが冬弥のささやかな楽しみである。
きれいに盛りつけられた二人分の皿を、手際よくテーブルに並べていく。
「おお、わたしのぶんも用意してくれたのか?」
「あたりまえだろ」
「冬弥は優しいな。だから大好きだ」
少女は椅子によじ登り、軽く背伸びをして冬弥の頬にちゅっとキスをする。
「ほら席について、孤月」
苦笑しながら冬弥は、孤月の両脇に手を差し入れ、少女を椅子に座らせた。そうして自分も孤月の向かいの席に腰をおろす。
「いただきます」
しかし、冬弥の前に座った孤月はテーブルにひじをのせ、冬弥が食べているのをにこにこ笑いながら眺めているだけであった。
いっこうに料理に手をつける気配はない。
せっかくの温かい食事が冷めてしまう。しかし、そんな孤月を気にする様子もなく、冬弥はもくもくと食事をとり続けていく。
そこへ、テレビからニュースを読み上げる女性の声が聞こえた。
『昨日G県久比里峠で乗用車がカーブを曲がりきれず十五メートル崖下へ転落。乗っていた二人の男女が遺体で発見されました。亡くなったのは都内に住む――』
テレビの画面下に亡くなった男女の名前と年齢が表示された。
堀田雅也(二八)
その妻、堀田恵(二四)
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