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「これは……」
口に運ぼうとしたフォークを持つ手を冬弥はとめた。
フォークに絡めたパスタがほどけて皿に落ちる。
言いかけて口を噤んでしまった冬弥に、孤月は眉をよせた。
「ただの事故ではないね」
「ふむ」
急カーブを曲がりきれずとアナウンサーは言っているが、そうではない。いや、そうなのかもしれないが、実際は少し違う。
そこに大きく何かの手が加わっていた。だが、殺人事件とも違う。
それはつまり――。
「霊的なものが絡んでいる」
「視えるのか?」
孤月の問いかけに冬弥はうなずいた。
テレビの画面には事故現場で大破した車が映し出されていた。
フロント部分は大きくへこみ、ガラスが粉々に割れ飛び散っている。
頭から真っ逆さまに崖下に突っ込んでいったのだろう。
一瞬だけ映ったひびの入ったフロントガラスには、血が付着していた。
現場の状況からしてかなりの事故だというのは一目瞭然であった。
冬弥はわずかに目を細める。
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