公園の少年

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「あ、お客さん。」 支払いも済み、立ち去ろうとしたアスカを大学生ぐらいと思しき男の店員が呼び止める。マスクをしていたが、正体がバレたのだろうか。 アスカはただの肉好き女子ではない。 今やテレビやラジオといったメディアに出ない日は無い、 人気アイドルグループのメンバーの1人。 特に学生であれば知っている人の方が多いのではないだろうか。 最近ではプライベートであっても、街中で声をかけらることも増えてきていた。 ただ、今回はそうではなかった。 「1000円以上お買い上げの方にこちら差し上げてますので、どうぞ。」 店員は事務的にレジの内側の引き出しからそれを取り出すと、アスカに渡した。 手渡されたのは水晶の着いた携帯ストラップだった。 青というより碧色の水晶。 好きな色の1つだった。 レジ横に設置されたキャンペーンのポップを見ると、 どうやらこの弁当屋が提携している、アクセサリーショップの販促品らしい。 今年も期間限定・数量限定で配付中と書いてある。 軽く会釈して水晶付きのストラップを受け取ったが、 すでにアスカのスマートフォンにはストラップが付いており、 とりあえずアスカは肩から掛けたポーチにストラップを入れて店を出た。
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