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俺から離れていくドラゴンさんを見送っていると、後ろから声が掛かる。
勿論その声の持ち主はダンジョンコアさんなんだけど、普段の声色より平坦で、普段の声色より抑揚が無い。
思わずビクッとして、油の効きが悪くて錆びている壊れかけのロボットのように、手と足を同じタイミングで出しながら、後ろに振り向く。
完全に後ろに向こうとした瞬間、何かで頭を掴まれる。
何が掴んでるか見えないから、たぶん魔力だと思う。勿論その魔力の持ち主はダンジョンコアさん。
にしても、へぇー、魔力ってこういう使い方が
「痛い痛い痛い痛い痛い!」
『マスター』
ミリミリと、普通なら鳴らないような音が自分の頭から発せられてるのを聞きながら、さっきよりも平坦で抑揚の声でダンジョンコアさんに呼ばれる。
あのね、うん。チビるかと思った。
怖い。
「なんでございますでしょうかダンジョンコア様!」
『言葉がおかしいですよマスター。どうかなさったのですかマスター。私に話し掛けておいて、私を放っておいて勝手に喧嘩を始めたマスター。私に何か用が有ったのではないですかマスター。何か答えてくださいよマスター。私はちゃんと、例え敵が攻めて来たとしても、ちゃんとマスターの仰る事を聞いて返事をしますので、ゆっくり、焦らず、ちゃんとお話ししたいことをお聞かせくださいマスター』
言葉を重ねる毎に、俺の頭が悲鳴を上げていって、遂に頭から血が出始めた。
アカン、これ、1度死ぬの確定や。
思わずエセ関西弁が出る程度には、ダンジョンコアさんの怒りのボルテージが高かった。
『くだらないことを考えてないで、さっさとお話しください。
汚い花を咲かせますか?』
「言います!言いますけど今は痛みが先行して正直考えが纏まりません!なので1度、解放はしなくて良いので力を弱めてください!!」
『…………………』
なんか、ダンジョンコアさんから不服そうな雰囲気を感じたけど、力を弱めるんじゃなくて解放してくれた。
痛ぇ……。痛ぇよ……。正直このまま黙ってこの目の前の我が儘理不尽様の事なんか放っておいて
『マスター?』
「うぃっす。話すっす。話すっすから、このままでも良いんで、力はマジ緩めてくださいっす。俺の頭に綺麗な花が咲きます。およそ人生で1度しか咲かせない綺麗な花が咲くっす」
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