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彼が小鳥の前に手を差し伸べると、そのまま飛び乗ってくる。動作はまさに地球の小鳥と変わらない。
たとえこの鉄の体で飛んでいても、気が付く人なんていないだろうと思えるほど、精巧な作りをしていた。
思わず見惚れていると、ふと小鳥の胸の部分が観音開きのように開いていく。そこには天体望遠鏡のレンズが埋め込まれていた。
「覗いてごらん」
テンペリア星人は促す。彼は小鳥を手に乗せたまま、レンズの中を覗いてみることにした。
そこには、世界中の自然や町並みなど、あらゆる風景が映し出されていた。それらの中には、時として動画も混じっている。驚くほど鮮明な画像に、彼は舌を巻いた。
「凄いだろう。こうして各国の光景を記録して、持ち帰るんだ。これらの資料はやがて、地球そっくりの星を作るために活用されることになる」
「地球をもう一つ作るのか?どうしてだ?」
その質問に、テンペリア星人は自慢気に胸を張って答える。
「ふふふ。我が第二の故郷にするんだよ。実はテンペリア星はもう長くない。星には寿命があることを知っているだろう?
そこで、今度はテンペリア星と地球双方のいいとこどりの惑星を創造しようと考えているんだ。そのために、この小鳥が活躍していたんだよ。
ただし、長くないといったって、まだあと数千年の猶予はあるけどね」
その言葉を聞きながらも、彼はレンズの中の風景に釘付けになっていた。
ふと、見覚えのある場所が映し出された。海に近く、小高い丘。そこは彼が妻と初めて出会った思い出の場所だった。
「あ! ここは……」
また映像が切り替わった。今度は都市部だった。これも見覚えがある。雪が降っていた。街はイルミネーションで彩られていた。
その街は、彼が妻にプロポーズを申し込んだレストランのある街だった。
とにかく高級なレストランで、彼は終始緊張し、告白の瞬間などは声が裏返っていたことを思い出した。
それを聞いた周囲の客が怪訝な顔をする中、給料数か月分の指輪をプレゼントしたこともまた、思い出すことになった。
テンペリア星人が口を開く。
「その小鳥は、地球上のあらゆる風景を記録している。だから、君にとっては特別な場所も見つかることだろうね。
なんたってその小鳥は、もう何十年も世界中を飛び回っていたんだから」
次に切り替わった映像は、彼と彼の妻が待望の息子を授かった病院だった。
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