第1章

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 褒められると照れてしまうという精神構造までも、地球人と似通っていた。  いや、ひょっとすると、この広大な宇宙に芽吹いた文明人たちは、さほど地球人と根っこの部分は変わらないのかも知れない。  彼はそう思いながら、照れるテンペリア星人を見つめていた。気が付くと彼は笑っていた。   「笑ったり泣いたり。今日はなかなか忙しそうだな」  照れ隠しか、そう皮肉を口にするテンペリア星人。ますます人間味のある相手に思えてきた。  ふと、彼は、このままテンペリア星人がずっと自分と一緒に、友達として生きていってくれないかと考えた。  そこで率直に、彼はその願望を口にしてみた。 「なあ、もしもあんたさえ良ければ、このまま暫く地球滞在を延長してみてはどうだい?  迎えの円盤には何とか都合つけてさ」 「ああ……そうしたいのは勿論山々だけども、それはできないんだ。  目下の理由は二つ存在している。   第一に、僕はこれまで、この小鳥を探し回って随分滞在期間をオーバーしているんだ。  初めて地球に降り立った時は……ええと、あれはまだ、日本が鎖国をしていた頃のことだから、随分長い間この星には世話になっていたなぁ。  それから第二に、僕はご覧のとおりの見た目だ。はっきりいって人間らしく生きていくことは、この星では難しいんだよ。  それこそ、最初に地球に来た時には、たまたま縁があって、外国のある家庭でこっそりと生活することができたんだ。  とってもいい人たちでね。彼らには本当に感謝している。僕がその家庭を出たのは、彼らの一族の最後の生き残りが天国に旅立ったのを見届けてだ。  その時に思ったよ。種族は違っても、長く一緒に生活していた家族の死は悲しいものだってね」  長く地球に潜伏していたテンペリア星人は、それだけの期間で相当な人間と関わってきたことが、彼には何となく分かった。  そして彼は、自分など比較にならないほど多くの愛すべき家族の死に立ち会っていたことを察して、言葉が詰まりそうになった。  独特の姿から、テンペリア星人の表情を読み取ることはできない。  しかし、一緒に生活してきた大勢の人々は、そんなこと気にすることはなかったのだろう。  声色から察するに、テンペリア星人は本当に地球で一緒に暮らしていた家族に感謝していたことが分かった。 「おっと、湿っぽい話は御法度だね、今晩その役目は、君が担っているのだからね。
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