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鍵を開け玄関を開ける。部屋の明かりはついていた。
「ただいま」
短い廊下を歩き、リビングに入る。誰もいない。
と、背後に何か動く気配がある。
「……そこか?!」
思わず小さく呟いて振り向いたが、既に同居人は自室から廊下に出ていて。
ガチャ。続けて玄関の扉のあく音。バタン。扉の締まる音が続いた。
「くっ今日も会えなかったか」
かれこれ2ヶ月にもなる。お互い干渉しあわないのが契約内容だったのだが、それにしてもこれは行きすぎな気もする。
同居人の年齢どころか男か女かもわからないままだ。いつも玄関口に靴すらおいてないし。相手の靴箱を覗けばわかるのだろうが、そこまでするのはためらわれた。
それに、ここは同居人の所有しているマンションで、僕の立場は少々弱い。
「まぁいいや、風呂にでも入ろう……お?」
テーブルの上にメモがあった。
『冷蔵庫にきんぴらごぼうがあります。よかったら、食べてください』
「やった、頂こう」
冷蔵庫からきんぴらを取り出し、ついでにビールも出す。
ビールを開け、きんぴらを口に運ぶ。
「うん、うまい」
同居人の作る一品物はいつも凝ったものではない、さりげないお惣菜ものだが、いつも間違いなくおいしい。
「後で何か作ってお返ししよう」
僕も料理をするのは嫌いではないし、結構友達の間では評判がいいのだ。
「何がいいかな……うん、こっちも定番の肉じゃがにしよう」
よしっと呟き、2本目のビールを取りに僕は立ち上がった。
シェア生活は上手く続いているみたいだ、多分。
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