プリン、ではなく

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スポーツ未経験者の私には、その涙が美しいかどうかさえわからなかった。 食べる?と差し出されたおつまみ袋から一握り分頂戴して、その塩味を味わう。 「うわあ、皐月くん失恋じゃん」 他人事のように呟くが、この人は自分が目立っていることに気付いていない。 中等部の人間の中に元生徒会役員がいたら、いやでも目立つ。 試合を終えた選手に注目が集まったのを確認してから、続ける。 「まあ、『勝ったら付合ってほしい』だから」 現実、負けたわけだし。 薄情者と呟く横顔は、どこか楽しげでもある。 「あんなに必死に勉強見てあげてたのに?」 「じゃないとアイツ、赤点まみれでしょ」 秘密を打ち明けるような、祈りのような神聖さを感じなかったと言えば、嘘になる。 「スルメイカよりあなたがすきです」 だが、そのセリフは最悪だった。 「ここはプリンではなく?」 「アンタ、プリンに勝てるとでも思ってるの?」
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