2人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
スポーツ未経験者の私には、その涙が美しいかどうかさえわからなかった。
食べる?と差し出されたおつまみ袋から一握り分頂戴して、その塩味を味わう。
「うわあ、皐月くん失恋じゃん」
他人事のように呟くが、この人は自分が目立っていることに気付いていない。
中等部の人間の中に元生徒会役員がいたら、いやでも目立つ。
試合を終えた選手に注目が集まったのを確認してから、続ける。
「まあ、『勝ったら付合ってほしい』だから」
現実、負けたわけだし。
薄情者と呟く横顔は、どこか楽しげでもある。
「あんなに必死に勉強見てあげてたのに?」
「じゃないとアイツ、赤点まみれでしょ」
秘密を打ち明けるような、祈りのような神聖さを感じなかったと言えば、嘘になる。
「スルメイカよりあなたがすきです」
だが、そのセリフは最悪だった。
「ここはプリンではなく?」
「アンタ、プリンに勝てるとでも思ってるの?」
最初のコメントを投稿しよう!