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かれこれ14年と少しの付き合いがあるこいつだが、治してもらいたいところは山ほどある。
勝手にノートを持ち出して宿題を写すこと。
私の好物だと知りながら、冷蔵庫のプリンを勝手に食べてしまうこと。
それらと同列でトップ3に食い込んできそうなのが、私の部屋に勝手に上がり込んではベットの上でくつろぐこと。
小学生の頃はそれでよ...くはなかったが、今は二人とも中学生である。
姉弟でもないのだから、いい加減にしてほしいところである。
「お前さ、まだこんなの描いてんの?」
「ちょっと、なに勝手に見てんのよ!」
「いや、そこにあったから」
そこにあったから、ではない。
ああ、これもそうだ。
隠しておいたものをわざわざ探し出して、堂々と覗き込んでくるところ。無神経。
「お前、絵上手いのに話イマイチなの変わんねえな」
「うるさい」
というか、お菓子の食べかすはちゃんと綺麗にして帰ってよね。
もしかして部活してそのまま寝っ転がってんじゃないでしょうね。汗くさいんだけど。
「特に最後の告白シーン?あんなこと言わねえって。何だったっけか...」
ノートをめくろうとするのをひったくって、その勢いのまま頭をはたいてやる。
スパーンと気持ちのいい音が出たので、ちょっとだけすっきりした。
「いってえな...アドバイスは冷静に聞いた方がいいんだぜ?」
「他人の部屋汚すヤツのどこがアドバイザーなワケ?」
床に置きっ放しのエナメルバックを、ベランダに出て捨てることにしよう。
しかし、窓に手をかけたところで先手を打たれた。
窓に手をかけたところで、閉められてしまったのだ。タイミング的には意地が悪すぎる。
手が触れあう。
距離にすれば十数センチ。
でも、相手がコイツじゃときめきなんて感じられない。
「大輝先輩ならよかった?」
「うるさい」
力勝負じゃ勝てないことはここ2~3年の敗因から明らかなので、ここは一度力を抜こう。
「皐月ならなんて言うの」
「俺?」
馬鹿正直に考え出したところで、距離を取る。
ノートは大丈夫。しっかり脇に挟んである。
「少なくとも、『あなたのためならすべてを捨てられる』とは言わない」
顔に出てしまったのだろう。思い出しただけ、と笑われた。確信犯とか。
「でも大輝先輩なら、こう言いそうだな」
やけに真剣に頷くものだから、食いついてしまうではないか。
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