スルメイカよりあなたがすきです。

2/3
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
かれこれ14年と少しの付き合いがあるこいつだが、治してもらいたいところは山ほどある。 勝手にノートを持ち出して宿題を写すこと。 私の好物だと知りながら、冷蔵庫のプリンを勝手に食べてしまうこと。 それらと同列でトップ3に食い込んできそうなのが、私の部屋に勝手に上がり込んではベットの上でくつろぐこと。 小学生の頃はそれでよ...くはなかったが、今は二人とも中学生である。 姉弟でもないのだから、いい加減にしてほしいところである。 「お前さ、まだこんなの描いてんの?」 「ちょっと、なに勝手に見てんのよ!」 「いや、そこにあったから」 そこにあったから、ではない。 ああ、これもそうだ。 隠しておいたものをわざわざ探し出して、堂々と覗き込んでくるところ。無神経。 「お前、絵上手いのに話イマイチなの変わんねえな」 「うるさい」 というか、お菓子の食べかすはちゃんと綺麗にして帰ってよね。 もしかして部活してそのまま寝っ転がってんじゃないでしょうね。汗くさいんだけど。 「特に最後の告白シーン?あんなこと言わねえって。何だったっけか...」 ノートをめくろうとするのをひったくって、その勢いのまま頭をはたいてやる。 スパーンと気持ちのいい音が出たので、ちょっとだけすっきりした。 「いってえな...アドバイスは冷静に聞いた方がいいんだぜ?」 「他人の部屋汚すヤツのどこがアドバイザーなワケ?」 床に置きっ放しのエナメルバックを、ベランダに出て捨てることにしよう。 しかし、窓に手をかけたところで先手を打たれた。 窓に手をかけたところで、閉められてしまったのだ。タイミング的には意地が悪すぎる。 手が触れあう。 距離にすれば十数センチ。 でも、相手がコイツじゃときめきなんて感じられない。 「大輝(だいき)先輩ならよかった?」 「うるさい」 力勝負じゃ勝てないことはここ2~3年の敗因から明らかなので、ここは一度力を抜こう。 「皐月(さつき)ならなんて言うの」 「俺?」 馬鹿正直に考え出したところで、距離を取る。 ノートは大丈夫。しっかり脇に挟んである。 「少なくとも、『あなたのためならすべてを捨てられる』とは言わない」 顔に出てしまったのだろう。思い出しただけ、と笑われた。確信犯とか。 「でも大輝先輩なら、こう言いそうだな」 やけに真剣に頷くものだから、食いついてしまうではないか。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!