縁日の金魚

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「おはよう、ロイヤルストレートフラッシュ」  私は、小さな金魚鉢に入った小指ほどの大きさの金魚に話しかける。  この金魚は先日、隣の市であった縁日でゴミ箱の中に捨てられていたのを見つけて拾ってきたのだ。  袋の中に入れられていたときは弱っているようにみえたが、いまは狭い金魚鉢の中を元気に泳ぎまわっている。 「おはよう、まゆり」  金魚は口をパクパクとさせると小さな姿に似合わないほどの低い声をその口から発した。 「って、そのロイヤルストレートフラッシュってなんだよ!」 「金魚のきみの名前だよ」 「名前だー?俺様の!?俺様をなんだと思ってるんだ。悪魔だぞ、悪魔!」 「あー、はいはい。そうですね」  どうやらこの拾ってきた金魚は、悪魔らしい。  たしかに、ロイヤルストレートフラッシュが来てから……この名前は長いから略してロストと呼ぶことにしよう。  ロストを拾ってきて数日、飼っていた金魚達と一緒に大きな水槽にいれていた。けれど、ロスト以外の金魚が病気にかかり死んでしまったのをみて、あわててロストだけでも、とこの小さな金魚鉢に入れたのだ。  あれがもしも、この自称悪魔であるロストのせいだとすると……。
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