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今はぽつぽつとしか営業していない、言わば寂れてしまった商店街の、うどん屋と和菓子屋の間に桜の木が一本。とても申し訳なさそうに生えている。
どうしてこんな場所に桜の木があるのか、僕は全くもっては知らないが、存在感を見せつける度に、その枝はカットされてゆき、今ではうどん屋と和菓子屋を、邪魔しない程度に収まっている。
唯、前に伸びる事と、上に伸びる事は許されているのか、そこだけは存分に、伸び伸びとしているように見えた。その生きる事を許されたスペースを、余す事なく楽しんでいる桜の木は、今が満開で、前と上に高く伸びた枝達には、可愛らしくポンっと咲いた薄ピンクの花が、賑やかに咲き笑っていた。
それは、遠足へと向かう幼稚園の列のように、楽しそうにくっ付きあっていたり、ひとつふたつは落ち着きなく離れていたり。限られた枝に花を咲かす事も、争奪戦のようにさえ感じる。
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