申し訳なく咲き誇る

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 僕が2歳の時に、父と母は離婚をした。普通ならば、母親に引き取られる事が多いと思うが、僕は父に引き取られた。何故なら、夫婦が破綻した理由は母親側にあったのだ。それでも父はその人を、真面目な人だと言っていた。真面目なやつだったから、神経質になり過ぎたんだよ、と。  その神経質になり過ぎた結果、その人は、僕に手をあげるような事も多々あったみたいだ。その話は祖母から聞いた話で、父からは何も聞けなかった。  何度か、僕に会いたいと連絡が来ていたのは知っている。しかし、父は頑なに会わせなかった。それが何故今更と僕は思っていた。もう、今更母親に会うだなんて、どんな感情も持ち合わせていないのだ。会いたい寂しいから憎いになり、それも過ぎた今は、正直どうでもいい。だけど父は今がその時だと言い出したのだ。 「成人を迎えるまでは、会わせないと決めていた。もう、お前も大人になった。そろそろ会ってやりなさい」  僕は断った。会う必要が無いと言った。なのに父は会ってくれと言った。その目は何か、いつもの父とは違っていた。なんというか、大人に話すような目つきだった。  それを見た僕は、父もこの18年間辛かったのだと理解した。会わせる事でその荷が降りるのなら、そうしようと思ったのだ。
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