眼鏡越しのカレ

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「それ、伊達?」 急に後ろから、声を掛けられた 驚いて振り向く いつも両手を枕にして眠っているカレが、じっとこっちを見つめていた 「え?」 「それ」 カレはふっと笑い、こっちに手を伸ばす そして、掛けていた眼鏡をすっと取るとレンズを覗く 「やっぱ、入ってないじゃん」 別にバレたところでどうなることもない だから素直に頷く 「なんで掛けてるの?」 「顔が嫌いだから」 昔から、この顔で苛められた こいつ、オンナみてぇ そう言わられて誂われ 街を歩けば、ヘンなやつらにからまれた 電車に乗れば、身体を触れられる そんな思いはもうたくさんだ だから、前髪を伸ばし度の入っていない眼鏡をかけて 俯くようにして、顔を隠した 誰もこの顔さえ見なければ 誰もオレを見なければ 誰もオレに近寄ることはない 誂われることも 絡まれることも 触れられることも 何もない 「もったいないね」 「え?」 カレは眼鏡を机に置くと、その手をオレの頬に当てた 「とても綺麗なのに」 「そんなことない」 頬に触れている手を外そうとしたら、逆に掴まれた 「すごく綺麗だよ」 「からかってんのか」 「素直に言ってんのに」 「こんな顔、オレはキライなんだ」 「俺はスキだよ」 カレは立ち上がると、オレの前に立つ 「俺と2人でいる時だけ外してよ」 「なんでだよ」 カレは身体をオレの目線まで下げて、軽く唇をオレと重ねた そして、にっこりと笑うと 好きだからに決まってるじゃん
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