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「そうやってわいわいしているうちに、ドアがピンポーンって鳴って。ひまわりさんが帰ってきた! 全員、競争みたいに玄関に走ってった。だって、うわさのひまわりさんを、早くこの目で見たかったんだもの。
ひまわりさんが、渚先生といっしょに入ってきた。誰が見てもうれしくなっちゃうような笑顔で玄関に立って、わたしたち全員にあく手をしてくれた。三歳の末吉ちゃんにまで、『初めまして、お会いできてうれしいわ』って、いってくれたのよ。
そのまま、ひまわりさんを真ん中にして、玄関でおしゃべりになったんだけど、わたしは一人でリビングにもどったの。くまを出しっぱなしにしてたのを思い出して。箱に入れるだけでも、入れといたほうがいいかなって思ったの。
で、リビングに入って気がついた……テディベアがない」
あんなのほっぺたは、うっすら青ざめた。あたりの温度が急に下がった気がした。
「どきどきして、箱の中やまわりを探した。そのとき、『何してるの?』って声がして」
あたしの手まで、いつの間にか氷みたいに冷たくなってる。
「たんぽぽさんが、リビングの入口に立ってた」
あたしは顔を上げた。
「たんぽぽさん?」
あんなはうなずいた。
「ひまわりさんの妹。中学生なんだけど、わたしたちといっしょにレッスンを受けているの。あまり、しゃべらない人なんだ。ひまわりさんとは似てない。ちょっと……」
あんなは口の中でごにょごにょごまかしたけど、あたしははっきりいった。
「つまり、ひまわりさんみたいに、美人でもないし、ピアノもうまくないっていうこと?」
ちょこっと、首をかしげた。あんなは、失礼なことをいわない子なのだ。
「……それで、わたし、たんぽぽさんに聞いたの。『イエローダイアモンドのテディベアが見当たらないの。たんぽぽさん、知らない?』って。そしたらたんぽぽさん、おそろしい顔で叫んだの……『どろぼう!』って」
あんなのほっぺたに、また涙が転がって落ちた。
「だって、あんなは、とったりしてないんでしょう?」
あたしが肩にさわろうとしたら、
「とらないよ!」
顔を上げて、大きな声を張り上げた。
あたしはびくっ、とした。目の前で風船がはれつしたのかと思った。
「わたし、絶対、絶対、そんなことしない」
あたしは友だちの手をかたくにぎりしめた。
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