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ここでだまってたら、女がすたる。あたしは両手で目をひっぱって、べろを最長のばして、はでなあっかんべーを返した。
「ツーアウト、相川さん」
チョークの手を止めもしないで、先生がいった。
アイスマンって、後ろにも目があるの? ていうか、なんで洋はいわれないで、あたしだけなんだよ。
「スリーアウトでチェンジ。教室から退場してもらいますよ」
あたしは「いーっ」って、先生にもはでなあっかんべーをした。
もちろん心の中で、だけど。
出席をとって、提出物の確認とか、委員会からのお願いとか、いつものいろいろがあって、朝の会の最後に、先生がプリントを配った。
「警察から、安全情報が数件届いています」
教室はざわっ、とした。みんなで顔を見合う。
そうなのだ。おばあちゃんがきのう聞いてきた。このあたりでも、連続ひったくり事件があったのだ。犯人はまだ捕まっていないのだ。
「メールでもお知らせしていますが、みなさんもじゅうぶん注意してください。何度もいっていますが、知らない人に話したり、ついていったりしないように。また、手さげは車道の反対側に持ち……」
今日知らない人に、あたし話しかけたよなあ。これって、よくないこと?
そんなことを考えながら、あたしはプリントを適当に机につっこんだ。
〇
わいわい、うるさい声やらボールやらが盛大に飛びはねている、昼休みの校庭。
鉄棒んとこに、うちのクラスの女子が五、六人固まった。
「小学生女子にも、ひったくりにあった子がいるんだって」
トーテムポールにもたれて、マダム五十嵐が重々しくいった。
「これは正式に発表されてないんだけど、今度のは、ひったくりってレベルじゃない。凶悪な強盗なんだって」
マダム五十嵐は、学年一、いや学校一の情報通だ。マダムの、おかあさんの、友だちの、知り合いの、親せきが、警察におつとめしているらしい。
「強盗?」
女子たちはそろって、不安そうな顔になる。
「そ、犯人は二人組。グレーのパーカにマスクで、顔はよく見えないんだって」
すぐ横で連続ファルコンに挑戦中だったあたしは、なわとびをやめて口をはさんだ。
「マダーム、それって、さっきの安全情報まんまじゃね?」
マダムは平気のすまし顔だ。
「もちろん、そこまでは発表されてるの。で、ここからが未発表情報。やつらは武器を使うのよ」
「武器?」
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