猫頭山

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 うちは本棚から古い植物事典ひっぱりだして、マタタビのページ、探して広げたんよ。ドンピシャ。クロの頭に生えたのマタタビやったねん。  ――こら、あかん。  うちは、その木をえいやとひっこぬいて、外に放り投げたんよ。  クロの頭に集まってきた猫も、木がなくなったとたんに我かえって、くもの子をちらすように、クロの頭から去っていったんよ。  もう大丈夫やで、クロ。  やけど、その大丈夫は、まだ早かったんよ。  また、クロがなさけない声をあげて、しきりに頭を気にするねん。そやから、虫めがねで見たらな、犬のべスがな、出きた穴に何かをうめとるところやった。  べス、なんで、そないなとこにおるねん。  そや、ベス、何うめたんや。  答えはすぐわかったんよ。  ボコボコと音をたて、はじけるように恐竜の化石がタケノコのように出てきたんよ。  うちから見たら、着せかえ人形サイズの恐竜の化石なんやけどな。  あ、べス、おどろいて飛び出したわ。けど、べスと入れちがいに、作業姿の人やら白衣の人が集まってきたんや。  クロ、完全にめいわくそうな顔しとるわ。  ――しゃあないな。  うちは虫めがねをのぞきながら、ピンセットで化石をつまんでばらして、それを集まってきた人らの足元においたんよ。  もう、台風みたいやった。気づいたら、化石も人もおらんようになってたわ。     
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