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「なんで、教室でメシ食わないの。喧嘩でもしてんの」
「ううん……その……マスク外すの、恥ずかしくて」
「なんで」
絵麻は答えられない。
「なんで」
「口……隠したいの。大きすぎるから」
想定外の答えだったのか、内田は目を丸くした。
「俺、お前が口開けて笑ってる顔、好きだけど」
今度は、絵麻が驚く番だった。
え、と聞き返す間もなく、内田は立ち去ろうとする。
教室のドアまで辿りついたところで、少しだけ振り返った。
「花粉症、いつ終わんの」
「……もうすぐ」
「終わったら、マスク外せよ」
絵麻は、答えられない。新学期からも、これで通そうかと思っていたからだ。
焦れた内田が、しっかりと振り返る。
その勢いに負けて、絵麻はこくんと頷いた。
内田の頬は、炎症を起こしている絵麻の頬より赤かった。
-終-
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