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隠しごと
4限の終わりを告げるチャイムが鳴った。
絵麻は、机の横にぶら下げていたランチバッグを取ると、素早く席を立つ。
「絵麻、今日も部活?」
仲の良い結衣が、後ろの席から声をかけてくる。
「うん、展覧会に備えて、ちょっとやっておきたいことがあって」
「大変だね」
「終わったら、すぐ戻るね」
「うん。うちらは、教室にいるし」
自然と結衣の席に集まってきた陽鞠と紗菜にも手を振って、絵麻は書道室のある第3校舎へ向かった。
特別教室しかない第3校舎は、静かだ。もうしばらくすれば、吹奏楽部の自主練が始まるが、昼休みが始まったばかりの今は、それもない。
3月も終わりだというのに、ひんやりとした第3校舎の3階まで上がる。誰もいない書道室を通り過ぎて、絵麻は並びの空き教室に入った。
差し込む光に、埃が舞っている。机も椅子も片づけられた床に直接座ると、お弁当を広げる。そこで呼吸を一つ。
朝からしっぱなしのマスクを引き下げて、様子を窺う。
ちょっと鼻がむずむずしたけど、大丈夫なようだ。
肩を下ろすと、そこでようやくお弁当を食べ始めた。
結衣たちと教室で食べていた昼食を一人で食べるようになって、そろそろ2週間だろうか。
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