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「お客さんも少なくなってきたし、そろそろ休憩行ってきて大丈夫だよ」
「あ、わかりました。お先に休憩入ります」と礼儀正しく挨拶をしてくれる後輩を見て、少し罪悪感が生まれた。
毎回決まった時間に来店する彼を初めて意識したのは一ヶ月前くらいで、お会計時に慌てた様子で「すみません、お金おろしてくるので、少し待っていてください」と急いでATMに向かう姿がなんだか可愛かったのを今でも覚えている。それ以来少しずつ会話するようになった。
そして今日も、いつも通りの時間に彼が来店した。
「いらっしゃいませ~」
なるべく平然を装いつつ、挨拶をする。まだ着慣れていなさそうなスーツを着た彼が、ぺこりと軽くお辞儀をした。
彼が買うものは大体決まっていて、大盛りパスタと炭酸飲料、あとたまにチョコレートなどを買っていく。買い物内容を覚えているなんてちょっとストーカーみたいだなと自分でも思うけれど、毎日同じような商品をカゴに入れてレジに来る彼を意識していたら、自然と覚えてしまった。
「いらっしゃいませ。お仕事おつかれさまでした」
商品を一つずつスキャンしながら、世間話をするのが日課になっていた。
「ありがとう。なんか最近毎日いない?」
「毎日ご来店ありがとうございますー。女子は色々とお金がかかるもんなんですよ」
「そりゃ男にはわからない苦労なのかな」
会話してる時の無邪気な笑顔が、わたしは好きだ。年上なのに話しやすく、わたしの顔も自然とほころんでいく。この時間が楽しみで、毎日無理やりシフトに入れてもらっているだなんて、絶対に言えない。
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