第四話「ツキが逃げゆく足音を止めろ」

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 さてと今日も智也のところに行って困っている人がいないか訊いてみるか。あっ、そうだ瑠璃を見守っている稲荷神社にでも行って様子を見て来るのもいいかも。きっと参拝者が増えて大忙しかもしれない。  瑠璃がSNSで稲荷神社のこと投稿した影響が出ているはずだ。 『この稲荷神社のおかげでいい人と出会えて結婚することになりました』なんて書いてあった。しかも『いいね』の数が一万を超えていた。  狐神様も喜んでいるだろう。きっと参拝者が増えたことで力も増しているはずだ。 「ヤスくん、なにニヤニヤしているの。あっ、嫌だ。エッチなことでも考えていたんでしょ」 「ば、馬鹿なこと言うな。そんなこと考えていないよ。稲荷神社のこと考えていただけだ」 「ふーん、そうなんだ」  なんだこころの目は。疑っているのか。まったくこころのやつは何を考えているのだか。 「じゃ、ちょっと出掛けてくる」 「えっ、待ってよ。私も行く。いいでしょ」 「行くって学校は」 「もう、今日は日曜日でしょ」 「あっ、そうか」  ダメだ、完全に曜日の感覚を失っている。まあいいか、そんなこと。こころと出掛けられるのだから。 「路子さん、ちょっとこころと出掛けて来るからさ」 「はいよ、いってらっしゃい」 (完) ***** 『涙を呼び込む神様の小径』完結です。 きっと、今でも康成、智也、こころ、路子は困った人に手を差し伸べていることでしょう。 そうそう猫のキンもでしたね。 最後まで読んでいただいたみなさんに感謝します。ありがとうございました。
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