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「今日はごちそうさまでした」
「いえいえ、私の料理でよかったらいつでも食べに来てね。今日は、楽しかったわ」
瑠璃は下まで降りて見送ってくれた。
康成はこころとともにお辞儀をして駅へと向かおうとしたところで背後から瑠璃の悲鳴が聞こえて振り返る。
「あっ、大丈夫だから」
何があったのか瑠璃は尻餅をついて笑っていた。
大丈夫と言われてもそのまま帰ることも憚られて、戻ると「野良猫が飛び出してきて驚いただけだから」と苦笑いを浮かべていた。
そういうことか。
立ち上がった瑠璃はスカートの汚れを払っていた。
瑠璃はついていないというのとちょっと違うのかもしれない。そんな気がしてきた。
智也の言う通りなのだろう。
「また、遊びに来ますね」
「ええ、またね」
瑠璃の笑顔はみんなも笑顔にさせてくれる。そんな笑顔をしていた。
んっ、今、視線を感じた気がしたけど。誰もいないか。気のせいだろうか。康成は少し考えてさっき瑠璃を脅かした野良猫でもいたのかもしれないと思うことにした。そんな気配だった。ただちょっと寂し気な念もあったことが気にかかる。猫じゃなかったのだろうか。
「どうかした?」
「いや、なんでもない」
「そう。じゃ、瑠璃さん、またね」
瑠璃も「またね」と手を振って見送ってくれた。
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