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瑠璃の姿が見えなくなったころ、こころが「ヤスくん、瑠璃さんのこと好きでしょ」と問い掛けてきて「えっ、そんなことないよ。笑顔が素敵だなと思っただけだよ」と返した。
「ふーん、そうなんだ」
これってヤキモチだろうか。康成は心が躍った。
「あっ、こころの笑顔も可愛くて好きだよ」
「やだ、もう」
こころがバシッと肩を叩いてきた。照れた顔もまたいい。けど、思ったよりも強く叩かれて肩が痛かった。
あれ、そういえばキンはどこへ行ったのだろう。さっきまで一緒にいたと思ったのに。
「こころ、キンはどこ行った」
「えっ、キンちゃん。いないね。やっぱりキンちゃんって神の使いかもね。もう神社に帰っているかもよ。それか、妖怪猫又かも」
まさか、そんなことって……。
んっ、あっ。
康成はなんとはなしに見上げた空に烏天狗らしき姿が目に留まる。明らかに鳥ではない。その足に猫らしき姿も確認できた。あれはきっとキンだ。
そうか、そういう手もあったのか。あれはきっと神成荘の小烏天狗だろう。もしかしたら今回は烏天狗も手伝ってくれるのかもしれない。けど、キンみたいに空を飛んで移動するのは勘弁してほしい。高いところは得意ではない。
「どうかした、ヤスくん」
「いや、なんでもないよ」
「もう、さっきからなんでもないばっかり」
「えっ、そうだったかな」
そういえばさっきの視線、小烏天狗だったろうか。いや、違う気がする。敵意は感じなかったから大丈夫だとは思うけど、どうにも気にかかる。
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