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瑠璃が路子の家にやってきた。
「いらっしゃい」
「今日はお招きありがとうございます。これお口にあうかわかりませんけど、シフォンケーキ作ってきたんです」
「おやおや、気を使わなくてよかったんだけどねぇ」
路子は目が三日月みたいになり口元をほころばしていた。
瑠璃は居間に通されると促さるまま座った。
康成はなんとなく玄関外が気になり見回してみたが特に何も変わったところはなかった。誰かの視線を感じた気がしたのに。玄関扉を閉めて、再びサッと扉を開けてみた。
んっ、あれは。
一瞬だがふさふさの尻尾が見えた。気のせいじゃないと思う。
「康成、いいから来なさい」
路子に声をかけられて居間へと足を向ける。
瑠璃とこころが笑い声をあげて話し込んでいた。そこに混ざろうと思ったのだが路子に手招きされてキッチンのほうへと向かう。
「なに、路子さん」
「気づいたんじゃないかい」
「えっ、気づいたって……。もしかして、狐のこと」
路子はにんまりとして頷いた。
さっきのふさふさの尻尾はどう見ても狐だ。
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