第四話「ツキが逃げゆく足音を止めろ」

21/34
前へ
/170ページ
次へ
 シユウとハネンは向き合い頷き合った。 「瑠璃の意識に入り込むぞ。路子様、康成、手を取るのだ」  言われた通りにふたりの手を握る。路子も手と手を取り合った。シユウ、康成、ハネン、路子がひとつの輪になった。 「目を閉じて」  康成は瞼を下ろした。その瞬間、瞼の裏に光の渦が映りパッと弾けた。  あっ、何かが見えてきた。あれは瑠璃だ。 *  今日も御朱印がひとつ増えた。いろんな神社仏閣の御朱印が増えていくとたくさんの神様や仏様とご縁が結ばれた気がする。瑠璃は御朱印を眺めて頬を緩ませた。  次はどこへ行こう。  やっぱり縁結びの願いが叶うところがいい。御朱印よりもその神社仏閣で神様や仏様に会うことが一番の目的。自分自身の魂も磨かれるだろうし。  あれ、あんなところに鳥居がある。  ちょっと行ってみようか。稲荷神社みたい。狛狐が出迎えてくれる。けど、どこか暗い感じがする。木々が生い茂っているし奥まっているから陽の光が届かないのかも。ここあまり来る人がいないのだろうか。ふとそんな思いに囚われた。けど、きっと近所の人は来ているだろうと思い直す。誰も来ていなかったらきっと雑草だらけになってしまうはずだ。 『狐神様、こんにちは。月村瑠璃です。どうぞお見知りおきください』  それだけ心の中で挨拶するとその場をあとにした。 *  おや、久しぶりに誰か来た。  いろんな神や仏の気を感じられる。この者は信仰心があついようだ。霊格もなかなか高そうだ。 『また来いよ、待っているぞ』  狐神はそう瑠璃の心に念を送ったのだが、どうやら届かなかったようだ。声は届かないか。しかたがない。また来てくれることを願うだけだ。 「わたくしがあの者にまた来るように気づかせます」 「んっ、そうか。子狐よ、よろしく頼むぞ。この宝珠の欠片を持っていくといい」  子狐は宝珠の欠片を受け取りペンダントに入れて首から下げるとぴょんぴょんと飛び跳ねながら瑠璃のあとを追っていった。 *  おや、狐の念も飛んできた。  康成はひとつの考えが浮かんだが、まだはっきりしていないと映像に集中をした。 *
/170ページ

最初のコメントを投稿しよう!

49人が本棚に入れています
本棚に追加