第四話「ツキが逃げゆく足音を止めろ」

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 朝目が覚めると御朱印帳が床に落ちていた。しかも開いており最後に行った神社の御朱印が目に留まる。なんで落ちたのだろう。この神社に行けという神様からのメッセージだろうか。そんなことってあるだろうか。  御朱印帳を拾い本棚の上に置こうとしたところで躓いてしまったが、本棚に手をついたおかげで転ばずに済んだ。そのかわり本が数冊落ちてしまった。単行本が足の上に落ちなくてよかった。けど、本の角がつぶれてしまいちょっと気分が沈んでしまう。  何をやっているのやら。  落ちた本を本棚に戻していく。  あれ、この本。  懐かしい。古本屋に売ってしまったと思っていたのに。  本棚を見遣ると本の後ろ側にも本があることに気がついた。二重に置いていたことをすっかり忘れていた。奥行があるからそうしていた。  確か、この本は可愛らしい狐が登場する物語だった。瑠璃は自然と頬を緩ませていた。何年前に買った本だったか忘れてしまったが、なんとなく内容は覚えている。再読してみるのもいいのかもしれない。それに本の整理もしたほうがいいだろう。  あっ、そんなゆっくりしていられない。遅刻してしまう。  瑠璃は支度をちゃちゃっと済ませると、目玉焼きだけつくり食パンとともに口にするともう一度鏡でおかしなところがないか確認をすると家をあとにした。 *
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