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神成荘から表の道に出たとなん暑い日差しと熱気に嫌気が差した。それでもかまわずキンは歩き続けていく。しかたがないか。
しばらく歩いていくと木陰があってそこでキンは止まりごろんと横になってしまった。キンも暑かったのだろう。毛皮を着ているし、地面からの照り返しもあるからキンのほうが倍以上暑いだろう。
康成は近くに水がないか探した。運よく公園らしきものが少し先に見えた。
「キン、ちょっと待っていろ。今、水を持ってきてやるからな」
康成は公園に向かったものの水をどうやって持っていったらいいのだろうと考えた。キンを連れてくればよかったのか。そう思い引き返してキンを抱き上げて公園に向かった。
到着するなり設置されている水道の蛇口をひねる。
キンは器用に出てくる水を飲んでいた。康成は自動販売機で飲み物を買って一気に飲み干した。
「おや、康成くんじゃないか」
突然、声をかけられて振り返るとそこにいたのは上田敏文だった。麻帆も一緒だ。そうか今日は日曜日だった。学校に行くわけでもなく会社に行くわけでもないから曜日の感覚がなくなってしまっていた。しかたがないかもしれないけど、そのへんはきちんと把握しておくべきだ。
「お久しぶりです」
「元気にしていたかい」
「はい」
「それはよかった。一緒に過ごした日々が懐かしいよ。あのときはありがとうよ」
「いえいえ、とんでもない。麻帆ちゃんも元気にしていたかな」
「はい、こころちゃんも元気ですか。と言っても昨日も会っているんだけどね」
康成は頷き近くのベンチに座り一緒に過ごした思い出話に花を咲かせた。
「あっ、キンちゃんも一緒だったんだ」
麻帆がキンを抱き上げて膝の上に置く。
「なんだかキンちゃん、暑そうね。猫も熱中症になるのかな」
そうか、猫も熱中症になるかも。大丈夫だろうか。
「ニャニャ」
いまいち具合が悪いのか元気なのかわからない。暑いことには変わりはないだろうけど。少し休めば大丈夫な気もする。
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