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上り終えて手水舎へと足を向けたところで、「あっ」との声がした。目の前に瑠璃がいた。
「瑠璃さん」
「こんにちは」
そうそうこの笑顔。なんだか素敵だ。そう思いつつ、「こんにちは」と返す。
「あの、こちらは」
「ああ、こちらは上田敏文さんと麻帆さんです。以前、うちに一緒に住んでいたこともあるんです」
お互いに会釈して手水舎で手と口を清めると拝殿で手を合わせた。
瑠璃と敏文と麻帆が参拝する姿を見ていたら、なぜだか家族のように思えてきてしまった。不思議だけどお似合いだ。違和感がない。これって、もしかして。
敏文は奥さんを亡くしていて独身だ。娘の麻帆がいるけど瑠璃が気にしなければ問題はないはず。麻帆のほうも受け入れてくれるか心配だけど、どうだろう。
あっ、そんなこと勝手に思ったらダメだろう。
あれ、キンのやつ。今、笑わなかったか。気のせいだ。猫が笑うはずがない。けど、キンだったらありえるだろうか。まさか、キンが出会わせたのか。いやいや、それは……ないとは言えないか。
このために外へ連れ出したとも考えられる。そんな気がしてきた。今回活躍できなかったからここへきて挽回しようと策略したのかもしれない。
そうか、智也とキンはこのことを話していたのかもしれない。だとしたら、やっぱり凄い猫だ、キンは。
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