第四話「ツキが逃げゆく足音を止めろ」

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 運命とは面白いもので、神社で出会った敏文と瑠璃は結婚することになった。もちろん麻帆も瑠璃とはいい関係で母と娘というよりも友達に近い関係性でいる。  智也の話だと狐神様と猿田神社の神様が引き合わせたらしい。その手伝いとしてキンが一役買っていた。  出会って半年で結婚とはスピード結婚と言えるだろう。もっと早く結婚する人もいるだろうけど。きっと敏文と瑠璃はうまくいくだろう。麻帆は天国のお母さんのこと忘れられないとは思うけど、瑠璃のことを認めている。瑠璃は敏文の家に行くたびに前妻のいる仏壇に手を合わせているらしい。きっと前妻も安心していることだろう。瑠璃はいい人だから。  神様が縁を結んでくれるって本当にあるのかと今回実感した。  智也からその話を聞いたときは驚いたが、嬉しくもあった。 「ニャニャ」 「おっ、来たなキン」  足に頭をごつんとぶつけて来てスリスリしている。 「やっぱりキンはすごいよな」  その言葉に満足したのか尻尾をピンとたてて神社のほうへと帰っていった。  あいつは何をしに来たのだろう。褒めてほしくて来たのか。  康成は頬を緩ませてキンを見送った。
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