第一話「頭の中の不協和音」

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「康成、俺さ、ずっとおまえと一緒にいるからな」 「なんだよ急に。変なこと言うなよ」  香神智也は笑みを浮かべて「男にずっと一緒に、だなんて気持ち悪いよな」と呟いた。 「そうだよ、気持ち悪いよ」 「だな」  智也はそう呟くと吹き出した。その様子を見て梅沢康成も吹き出してしまった。  確かに男同士で交わす会話じゃない。けど、智也には感謝している。小学生からの長いつき合いだ。智也は親友であり家族のようなものだ。  いつも何かしら助けられている。いじめられそうになったときも、不良たちに絡まれそうになったときも、事故に巻き込まれそうになったときも横には智也がいて助けてくれた。  どういうわけか自分は災難を招いてしまうところがあるらしい。悪い霊も呼び寄せやすいらしい。祖母がそんなことを話していた。『憑依体質なんだから、気をつけなきゃいけないねぇ』なんて言われてもどう気をつければいいのかわからなかった。お守りを一応持っているけど、時が経ち効果が薄れる頃に待っていましたとばかりに災いがやってくる。お守りを持ってくるのを忘れた時も災いは起きる。どれだけ憑依体質なんだか。嫌になる。そうそう、お守りの効果はだいたい一年でなくなるらしい。  そういえば修行しなきゃいけないなんて話も祖母はしていた。修行すればお守りだっていらなくなるとか。修行なんて嫌だと拒んでしまったのは間違いだったのだろうか。けど修行なんて今時する人なんていないだろう。いや、いるのだろうか。滝行だぞ。冷たいだろう。痛いかもしれない。嫌だ。座禅だったらいいかと一瞬思ったがやっぱりやりたくない。写経も出来る気がしない。筆で文字を書き続けるなんて無理だ。きっとやれば何かが違ってくるのかもしれないけど。
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