48人が本棚に入れています
本棚に追加
/170ページ
「どうやら、見えたようだねぇ」
コクリと頷き、「路子さん、これってどういうこと」と問い掛けた。
「それはねぇ。まあ、ゆっくりと自分で確かめるといいねぇ。ひとつだけ言ってあげるとしたらここは神域ってことかねぇ」
康成はなんて返答していいのかわからずにただ目の前の光景に目を奪われていた。
「ねぇ、あのおんぼろなのがアパートなの。嘘でしょ」
「そうだねぇ。でも、康成には他にも見えているんだろう」
「ああ、ここ凄いよ。路子さん」
満足そうに祖母は笑んでいた。
「なによ、どういうこと。路子さんも康成さんもズルい。何が見えているのよ。霊感がない私だけ見えないなんてなんか嫌だな」
「こころもいずれわかる時がくるから安心しなさい。霊感というものは誰にでもあるものなんだからねぇ。まあ、いろいろやらなきゃいけないけどねぇ」
祖母は微笑んでいた。
霊感は誰にでもあるか。本当にそうなのだろうか。祖母が言うのだからきっとそうなのだろう。それにしても、ここは気持ちいい場所だ。なんだかやる気が漲ってくる。
もしかしたら、自分はやっとスタート地点に立てたのかもしれない。胸の内に熱く込み上げるものを感じた。
「智也、僕、頑張るよ。もう後ろを振り向かないよ」と心の中で叫んだ。
***(第一話「頭の中の不協和音」完)
最初のコメントを投稿しよう!